
施主は、家族(故人)の遺品を端緒とした隣人との交流のある暮らしを望んでいた。まず倉庫併用住宅を新築し、広い収蔵庫を確保し、石蔵は着物や掛軸の虫干しや展示用の空間へと改修した。母屋は塀を解体し見通しの効くデッキを設えた。最後に3棟を渡り廊下により繋ぎ、地域に開き、私設ギャラリーを内包した敷地へと更新した計画である。かつてこの敷地の正面は母屋の門であったが、この度の整備において敷地の重心を石蔵に据え直した。その新しい正面に新しい要素として、家財の移動動線となる渡り廊下を配置した。動線をファサードとしたわけである。取るに足らない日常的な私的行為である家財の移動を視覚化し、私設ギャラリーとして正面性を持つ事で、家を開くという街への意思表示になっている。将来的に予定されている母屋の減築工事の後も石蔵と渡り廊下は維持される予定であり、施主の意思は担保される。また、3棟がひとつながりの建築群となることを目指し、新築した倉庫併用住宅は石蔵と1階壁面ラインを揃え、母屋とは屋根 形式を共通させている。外観に点在するヒノキ・大谷石は、素材レベルでの3棟の共通項となっている。
2