
上海の外灘中心に位置する古い建築と新しい高層建築を同時に一望できるロケーションはクリエイティブなインスピレーションを得るには充分な環境である。 私は高層建築における空間体験の問題点として場所性の欠如を課題として常に意識してきた。均一的な空間にどうリアリティのある環境を取り込むかをテーマにしている。高層建築のユニットに場所性があるとしたら都市の中での浮遊感が圧倒的に面白い体験だと感じている。それらを取り込むことでノイズの少ないどこにでもある空間は周囲の都市建築と呼応する空間になり得ると考えている。 145平米あまりの空間に求められた要望は、様々なファッションデザイナーと生産側とのミーティングができるクリエイティビティがあること、サンプルのストック場所、時には展示会場、パーティ会場などフレキシブルな空間利用ができることであった。 さまざな空間活用が可能な様にワンルームをメッシュパネルで分節し可動式の家具と共にデザインをした。大きく空間は2つに分節することが可能であるがパネルレイアウトにより複数の中心空間を持つ曖昧なレイアウトも実現できる。 窓側は階段式の展示台兼収納でマテリアルからデザインボードが格納できる作りになっている。南面の突き当たりには壁面ハンガー収納が設置されファブリックがインテリアの一部になっている。 可動パネルはW1200mm x H2600mmで天井パネルのモジュールとも整合性を保っている。メッシュの採用により奥行きと周囲の風景の取り込みを可能にし光のリフレクション効果も空間の広がりに貢献している。窓側の階段式の収納は周囲の風景の取り込みを考え、高さ1000mmで抑え水平性を重視した。天井も設備関係(一部スポットライトを除く)をメッシュパネル上に配置し高さ方向の奥行きと同時に水平性を意識している。 可動式デスクとハンガー、窓側収納には竹の集成材を使用、竹集成材は縦積層のものを炭化したもので厚さは19mmが基準になっている。品質の良い材料を入手するのは困難だが、材料により色むらがありとても奥行きのある質感になることを重視した。 様々なノイズを受け止められる都市に浮遊した自由度の高いユニバーサルスペースを目指した。