水谷マンション#309 洞窟のある家

日常の暮らしに感動体験を持ち込んだ、「洞窟」のある家。 「暗がりと明るみ」が共存する、光環境の強弱あるダイナミックな心地よさを計画した。 2020年のコロナ渦の中、家で働き、過ごす時間が半ば強制的に増えた。出勤という身にまとう環境をスイッチするきっかけがなくなると、日々団欒を重ねた居心地の良い家もどこか単調で物足りなく思える。改めて人間が生きていく「住処」の役割とは何か思考を巡らせた。 最高に楽しく仲間と笑い合う時間も、落ち込んで悲しい時間も、なんてことない日常こそ人生の時間の大半を占める、欠かせないエネルギーだ。そんな日常の中の小さな感動を見過ごさない感性を養うような、刺激的な空間体験が家には必要ではないかと考えた。 そこで、リビングのように機能で呼ばれる部屋は無くして、既存の窓の無い部屋を最大化するように、空っぽで暗い、洞窟と呼ぶ不安定な「暗がり空間」を配置した。その周りを囲むのは正反対に、明るく家らしい設えの異なる3つの部屋である。この強弱ある4つの環境を行き来しながら、どこで働き、どこで食べ、どこでリラックスするか、自分の感性を能動的に活性化し滞在場所を選び取る「環境」としての住処を目指した。

クレジット

  • 設計
    AKINAI GARDEN STUDIO
  • 担当者
    梅村陽一郎、神永侑子
  • 施工
    シャンティアートワークス
  • 撮影
    Syuheiinoue

データ

タグ