■配置計画、隅切り型の平面計画 歯科医院を営む夫婦とそのお父様のための住宅である。 敷地は静岡県焼津市、十字路の交差点に面した150坪の北東の角地である。施主は平屋建てを要望したが、交差点のはす向かいの空地を除いて全て2階建以上の高さの建物に敷地は囲まれていたためプライバシーを考慮した計画とする必要があった。そこで道路境界線沿いを塀で囲い、建物を北東に寄せる配置計画とした。さらに南西側、つまり交差点はす向かいの空地側に向け矩形の角を斜めに隅切りしたような平面形の建物とすることで広い庭をもちつつ、プライバシーを確保できる平屋を実現した。 ■変形差し掛け屋根 屋根形状は差し掛け屋根を旨としつつ、大屋根の勾配を隅切りの斜めの辺に向けた。軒先を低く抑えながら庭に面して間口いっぱいの開口を設け、大屋根と下屋の段差部はすべてハイサイドライトとした。 ■深い軒、借景、北の安定光、南北対角開放換気 大屋根の下の大部分はリビングルームである。庭に向かってパースの効いた空間は視覚的な広がりと実利的な気積を確保している。低く深い軒によって焼津の強い日差しをコントロールしつつ、庭を印象的に借景している。北向きのハイサイドライトは安定した光をもたらし、空の風景を切り取る。庭に出入りするためのドアとハイサイドライト頂部に設けた突き出し窓を開放することで、南北対角開放とチムニー効果により風が抜け、極力空調に頼らない暮らしができるようにしている。 ■畑、縁側 北東の部屋はお父さんの部屋である。東部に突き出した敷地の一角はお父さんの趣味の畑とした。そこに面した掃き出し窓と南面に設けた開口により北東の敷地隅の部屋でありながら採光と通風は十分である。畑には側道から裏庭を抜け直接アクセスできる。畑に面した縁側はふらっと訪ねてくる友人の多いお父さんにとって大事なコミュニケーションの場となる。 ■古き良き日本家屋、風土に馴染む現代性 平屋という施主の要望、地域制などを鑑み、古き良き日本家屋のあり方に立ち返り設計した。異形な部分については隅切りの角度を平面的に3:4:5 の整数比にするなど歩止まりが良く施工性、経済的合理性にも配慮した。一方、薄い軒やハイサイドライトによる軽やかな変形屋根と、重厚で自然な表情をもつ外壁を対比させることで現代的、個性的でありながらも風土に馴染みやすい佇まいをもたせた。

クレジット

  • 設計
    タカトタマガミデザイン株式会社
  • 担当者
    玉上貴人, 須藤勘太(元所員), 中川隆太(元所員)
  • 施工
    イセキ建設
  • 構造設計
    ジムネ構造空間研究所
  • 撮影
    吉村昌也

データ