東京恵比寿の地下1階にある健診と外来を行うクリニックの計画である。 地下という安定したインテリアであると同時に、自然光が入らず外的要素や方向性の乏しい環境でもある。健診のための動線を組む中で、採用した回遊式の一巡する平面構成の中に、抑揚を与えるため、直交をひしゃげた平行四辺形の回廊をメイン動線として中心に据えた。 クリニックの性格上、機器やサイン・情報など多くの要素が壁面に集中する為、天井面こそ視線の遊びであり、平行四辺形で切り取った形状を一つの建築のように、設備スペースを確保しながら片流れの屋根を周囲に向かって架けた。動線を曲面の壁によって膨らませ、各検査の機能を満たし、場所ごとに少しずつ表情が異なるスペースを軒下に展開しようとしている。回廊外周部の壁に斜めに貼られた木板によって視覚的な軽快さを持たせ、検査の流れに沿った目地の方向性と床のタイル目地とがぶつかり、緩急のある遠近感を表出している。天井は無目地の塗装仕上げとし、ツヤを抑え、勾配に沿って光が伸びるようにした。 平行四辺形、壁に貼られた斜めの木板、周囲に架けられた傾斜天井、それらの組み合わせにより、幾度も部屋を出入りする受診者の動きに対して、オリエンテーション(方向性、統一性、デザイン性)を与え全体を組み立てた。