和邇のコート・ハウス

和邇は大津市北部にあり、琵琶湖と比良山に挟まれた街である。のんびりした郊外の住宅地だがJR湖西線が南北に走り京都や大阪へのアクセスも良い。そんな和邇の高台に小さな住宅を設計した。愛犬家でアウトドアが好きな建主の楽しみは、週末に犬と琵琶湖で泳ぐこと。愛犬との暮らしと、和邇らしい風景や空気を存分に楽しめる住まいが求められた。 周囲の住宅からプライバシーを守りつつ屋外でも気持ち良く過ごせるよう、全体構成は中庭のある平屋となった。ただ中庭と言っても、四方を部屋で囲めば琵琶湖への眺望が失われてしまう。そこで軒下の一部はテラスなどの屋外空間とし、そこに大きな窓をいくつもあけて中庭と家の外を結びつけた。その結果、中庭というよりも「半中庭」のような状態が生まれた。琵琶湖を望み、比良山から澄んだ空気が流れ込む中庭は、こぢんまりとあたたかい室内のような屋外空間になった。全ての部屋が中庭に向かい、玄関も勝手口も中庭に面するこの家では、日々の暮らしは自ずと中庭を中心に営まれる。ただ中庭を眺める住まいではなく、生活の全てが中庭と共にあるような住まいをつくりたかった。ワンルームの室内は中庭を囲むようにカクカクと折れ曲がることで緩やかに区切られ、少しずつ違う居場所をつくっている。明確に部屋としての形はなくとも、人やモノが居座ることでなんとなく場所性が生まれるような、良い意味でルーズな空気感を作りたいと思った。朝は琵琶湖を望むテーブルでコーヒーを飲み、午後は中庭の傍の大きなソファで昼寝をするといったように、季節や時間にあわせて好きな居場所を見つけて過ごす、そんな大らかで気楽な住まいになっていればうれしい。

チーム

メンバー

クレジット

  • 設計
    design it
  • 担当者
    池田隆志, 池田貴子
  • 施工
    プラネットリビング
  • 構造設計
    EQSD一級建築士事務所 三崎洋輔
  • 撮影
    平井広行

データ