・概要:新築分譲を行うデベロッパー自身が運営する「ベーカリー」及びそのイートインスペースを兼ねた「平屋のモデルハウス(別館)」や「うら庭」から成る複合的施設。当施設エリアは50年以上前に作られた団地や住宅街。古くからの住民と、当分譲地の新規住民との交流場所となることで、子育て世代とシニア世代の「共栄」を図る施設の仕組みとした。 ・背景:トイットさつき/別館は千葉市さつきが丘に位置するベーカリー、イートイン兼モデルハウスである。千葉県を中心に宅地開発を行うデベロッパーが、新規分譲地31区画内の4区画分を利用して運営している。デベロッパーは一般的に販売完了と共に街との関わりがなくなってしまうが、日常に欠かせないベーカリーを作り、且つ自社で運営することで、分譲後もその街に関わり続けている。当地域には50年以上前に建てられた団地があり、古くからの住民も多く居住している。自社分譲地だけでなく、団地住民も含めた地域のコミュニケーションを活性化するため、うら庭も含めて開放的なデザインのイートインを設けた。さらに、そこにモデルハウス機能を付すことによって、コミュニティを大事にしながら地域と暮らすという自社の街づくりを感じてもらい、共感する新規平屋顧客の獲得にもつなげている。地域と共にビジネスも成長できるバランスのとれた仕組みである。 ・デザインのポイント:地域全体のコミュニケーション活性化装置として、末永く続くことを目指す当施設には、パンが好き、仲間と食事を楽しみたい、平屋に興味がある、など多種多様な目的を持ったお客様が地域内外から訪れる。その全てを受け止めるデザインとして、ベーカリーのエントランスは木貼りの壁で柔らかい印象にした。大きくせり出した切妻屋根は、お客様を陽射しや雨から守り、集いの場にもなる半屋外スペースを生み出した。ベーカリーは入口から出口まで一直線の動線がわかりやすく、出口から続く落葉樹とピンコロの小径は、歩きたくなる雰囲気で、別館へと自然に人々を導く。イートインである別館を貫く通り土間は、少し寄るだけ、靴を脱いでゆっくりくつろぎたい、どちらのニーズにも寄り添う。うら庭には客席にもイベントスペースにもなる開放的な空間を設け、手軽に動かせる椅子やテーブルを使用することで、マルシェやパン作り教室など、地域の交流の場にも対応する。