
日本最大のメガネ産地である福井県鯖江市。1984年に創業した「BOSTONCLUB」は、ここに本社を有するメガネメーカーである。今回は本社に隣接する築45年の4階建ビルを、ラボやミュージアム、フリースペースなどを兼ね備えたファクトリーストアにリノベーションする依頼を頂いた。 元々倉庫として使用されていたこのビルは「三六公園」という小さな公園の一部を切り取ったかのような珍しい敷地に建てられていた。近隣には小学校や中学校、幼稚園があり、子供たちが公園で遊んでいる様子が日常的に目に入る。そこでこの立地条件を利用し、より地域に開かれ地元の人や子供たちがメガネに触れる機会の場となるように公園を含めた建築計画を考えた。 このビルは公園に隣接しているものの公園との直接の行き来はできずに独立していた。そこで本社との間の空地と、公園の一部を改修し新たな道をつくった。最寄り駅にも繋がる大通りから直接公園へのアクセスを可能にし、利用者の通り道となる。1階の店舗には公園側に面してガラス張りのメインエントランスをつくり、公園を訪れた人が気軽に入ってこられるような開放感ある空間とした。 本社とこのビルをつなぐ廊下をつくりたいという当初からの要望は、あえて2階に渡り廊下としてつくることでこの公園との関係を可能にした。その渡り廊下に設けた窓で内外双方が視覚的につながり、公園と建物のどちらからも借景となって周囲との一体感が生まれた。 1階の直営店の店内はあたたかみのある雰囲気を残しつつも、クラシカルで未来的な同社のブランドイメージを表現。福井の伝統工芸である越前和紙を立体的に漉いて使用した天井や、商品を並べるベルベット生地、店内を飾る家具も地場の会社の協力を経て制作。全国・世界に発信する拠点として福井県をアピールできるものを多数使用した。 この建物と公園を舞台にしたイベントの開催なども予定されており、ますます多くの人たちを魅了する場所になっていくだろう。地域の人にも子供たちにもメガネをもっと身近に感じてもらい福井の産業に誇りを持ってもらいたい。鯖江のメガネ産業を発信する拠点として、これからもこの場所のポテンシャルが発揮されることを願う。