TETUSIN DESIGN RE-USE OFFICE

ビルディングタイプ
戸建住宅
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日本 福岡県

DATA

CREDIT

  • 設計
    yHa architects
  • 担当者
    平瀬有人・平瀬祐子・橋本剛
  • 施工
    イクスワークス、構造:yAt構造設計事務所 森部康司、外構:浦田庭園設計事務所 浦田知裕、照明:モデュレックス 佐藤政章 塚本洋子、解体協力:環境開発 セイシン MIYATA ART CONSTRUCTION、企画協力:九州大学 ハコと場をつくるSAITO 斉藤政雄 斉藤昌平、記録映像:仁田原力
  • 構造設計
    yAt構造設計事務所
  • 撮影
    Yousuke Harigane

福岡・筥崎宮参道に面して建つ住宅併用のオフィスである。九州大学箱崎キャンパス跡地で解体直前であった洋館建築「九州大学松浜厚生施設」(1928年竣工)の部材を大学より譲り受けることになり、取り壊し直前の限られた時間と予算の中で象徴的なファサードと室内の建具・階段を生け捕りし、別の新しい敷地で部材再構築を行った。長らくキャンパス跡地の歴史的建築物の保存活用に取り組むクライアントが,取り壊しによって人びとからこの箱崎の地に九州大学の記憶が失われることを危惧していたことが、プロジェクトの契機となった。 いわゆる文化財保存のように,痕跡を元にした厳密な修理を行うのではなく、歴史的要素の選択的転用により歴史的価値を新しい建築に繋ぎ合わせる「スポリア」的な記憶の継承である(スポリアとは西洋建築において彫刻や円柱などの要素を別の建物に転用し再利用する行為)。新しい建材の横に古い建具枠が配置されるなど時間差が並置・重層されることで、重層的な意味を獲得する。ものを介した記憶の継承の試みである。 元の敷地から約800m離れた新しい敷地への部材再構築にあたって、周辺環境への調和や準防火地域などの敷地条件に適応しつつ、重要な3つの記憶の継承が必要だと考えた。まちの風景の一部となっている外観の象徴的なファサードの〈都市的記憶〉の継承、気積が大きく荘厳さを伝える階段室の〈空間的記憶〉の継承、特徴的なファサードの色や力強い建具枠といった建築の持つ〈物質的記憶〉の継承である。新たなファサードは〈実〉としての歴史的建造物のボリュームを再解釈した〈虚〉としての鉄骨フレームの骨格によって、マッスとヴォイドのシンメトリーな対比的構成としている。既存の形態を想起させるような鉄骨フレームは、緑化による立体的なランドスケープや居住者の環境の変化に合わせた拡張性などを担保している。 テント膜の屋根によって室内はやわらかな質の光で満たされ、外部には行灯のように光を優しく拡散する街の新しいシンボルとなる。お祭りシーズンには建物前の筥崎宮参道沿いに約500軒並ぶ白テントの露店との一体感のある風景が生まれ、地域づくりにも取り組むクライアントを中心に、まちの人びとが集う新たなカルチャーを生み出す場所になっていくだろう。

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物件所在地

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