河童の家

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 設計
    Archipelago Architects Studio
  • 施工
    株式会社山田建設、外構:parsley、鉄骨:ウヌマ株式会社
  • 構造設計
    合同会社円酒構造設計
  • 撮影
    千葉顕弥

河童の家 敷地はもともと隣家の大きな庭の一角であったため、住宅街に建つという建ち方ではなく、庭のなかに建つような建ち方を目指した。施主は大道芸人で、河童のパフォーマンスをする方である。 フットプリントは23㎡ほど、法規的に高さも8mしか取れず、縦動線の計画で、平面と断面の全てが決まってしまうような条件であった。そこで、階高を最大限確保しつつ小さな気積の中にも広がりのある、建物全体でワンルーム空間となるように、あえて階段を中央に3重に配置して、その両脇に厚さ45mmの薄いの床を、幅と高さをずらしながら架ける計画とした。 この階段は構造にも寄与しており、ブレースとして機能しつつ、吹抜けの水平構面を固め室内の耐力壁を不要とし、中央の鉄骨柱の座屈長さを抑えることで、その断面を、家具のように華奢な寸法にすることを実現している。45mmのマッシブホルツの床は杉の角材をつなぎ合わせて作り、差し込まれた薄い簡潔な床は、構造でありながら仕上げでもあり、文字どおり表裏一体的に、空間を切り返しながら、その薄さによって、光と風と、人の気配を、階を跨いで、緩やかに行き渡らせる。 1階は、階段が居住スペースとパフォーマンスのための稽古場と工房を分ける。階段を登っていくと、薄い床が時にはカウンター、時にはベンチのように、目の前に現れては消え、それによって住人同士の関係性がめまぐるしく変化していく。 それぞれの部屋は身体的なスケールによって親密に織り込まれた、近いようで遠い、遠いようで近い関係となる。階段もあるときは天井や間仕切り壁のような存在になり、分節されているけれども繋がっているような、立体的で回遊性のあるひとつながりの空間を作り出す。 また、階段は床の延長として使われたり、あるいは椅子、棚やテーブル、キッチンとつながるカウンターとしても扱うことができ、常に身体と呼応する動的な機能性を持っている。階段の最上部は室内でありながらも、外の風景を楽しめるテラスのような場所にもなっている。 一方で、中央に配置された階段を天井や壁で行き止まりとすることで、上下を移動するという固定化された用途では無い別の使い方があるのではないかと思うキッカケとなっている。 その階段の仕上げを、木にしてしまうと家具として、金属だと構造としての印象に偏ってしまうので、木、石、金属、樹脂の全ての素材を使って緑青仕上げを施している。 外壁にも同じテクスチャを採用しており、その緑青の表情によって、自然物とも人工物ともいえないモノが庭との調和をつくっている。これから先、刻々と変化して行く緑青が周りの植物たちと共に、まちの風景の一部となっていく事を期待している。あるいは経年変化でおこる錆が、過去を想起させ、まるで以前からそこにあったような馴染み深さを感じさせる。 外壁と階段を同じ仕上げとすることで、各々の認識のなかで外の世界と内の世界とを繋げている。 合理性を伴う空間と表現的な現象を伴う空間とが1つの形式の中で共鳴する、3次元以上の広がりを生む建築を目指した。

6