敷地は、1970年代前半にひな壇状に造成された阪神都市圏のベッドタウンにある。南斜面の眼下にパノラマが広がる地域は、南に開放的/北に閉鎖的な表情の家が連なっている。 住み手家族はともに教師の夫婦と小さな子ども二人で、向こう10年は規則正しい生活が続きそうであった。毎日「おはよう」「いってきます」を言って家を出ていきたい、という要望とともに、しかし、いずれは(そして今すぐにも時折)家族間でも距離をとりたい時があるだろうと考え、内部のみんな/ひとりを外部のおもて/うらの様子に重ね合わせていった。 東は六甲山、西は大阪湾までが見渡せ、空に放り出されたような景色が広がる「おもて」だが、そこが住まいとなれば日常的な背景である。そこに変化を持たせるために、視線の断面的な動きにあわせて、近景の庭木や遠景の季節の移り変わりをさまざまに捉える窓とした。 外部では、石積みの擁壁や既存の木々が落ち着きのある庭をつくりだしている。浴室からは庭のモミジを、ロフトからは街路樹のサクラを望める開口を設け、それらが結果的に外形の凹凸を生み出している。いびつな外形が外部にも動きのある空間をつくり、古い既存擁壁の南階段へとつながっている。

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クレジット

  • 設計
    テレインアーキテクツ/TERRAIN architects
  • 担当者
    小林一行+樫村芙実
  • 施工
    三王テック株式会社、協力:木童
  • 構造設計
    鈴木芳典, 五十嵐日奈子 / TECTONICA.INC
  • 撮影
    笹の倉舎/笹倉洋平

データ