一家で熱帯植物の栽培を行う施主のための二世帯住宅の計画。地方の市街化調整区域では農地や宅地が混在し、それらを一体として所有する事例が散見される。本計画の建主も、隣接する「宅地」「農地(接道あり)」「農地(接道なし)」という3筆の土地からなる敷地を購入した。それらは一見ひとつの土地のようであるが、そこには机上で定められた見えない隣地境界線が引かれている。隣地境界線に着目することで、地方の市街化調整区域における農地と宅地の新たな風景の提案につながるのではないかと考えた。そこで、3つそれぞれの土地の制約に適合した別の建屋(住宅、農業用倉庫、温室)を、それぞれ隣地境界線ぎりぎりに寄せ、一体につながるように建てた。そうすることで、隣地境界線の存在が消え、大きなひとつの土地に建つひとつの家のように暮らせる。一方、それぞれの建屋の土地が異なることを示すため、3棟の間にごく狭いスキマをつくり、光の筋や雨の滴り、風の抜けといった環境による新たな隣地境界線を描き出した。本計画では、土地の制約や用途を超えた生活の繋がり、新しい風景、それにより起こり得る現象を設計した。
メンバー
クレジット
- 設計
- 1-1 Architects、造園/杉山拓巳、家具・木製建具/Hammock 石川雄一
- 担当者
- 神谷勇机、石川翔一
- 施工
- 平田建築
- 構造設計
- 小松宏年構造設計事務所 小松宏年
- 撮影
- 1-1 Architects
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