丘の上の木の下のCAFE SHIZUKU

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 設計
    mizuiro architects
  • 担当者
    葛西瑞都、葛西瑞樹
  • 施工
    mizuiro architects
  • 構造設計
    葛西建築設計
  • 撮影
    今井 聡

あたらしいのどかな風景 広大な林檎畑の中の集落の端部に建つ、ご夫妻で営む喫茶店併用住宅である。 この敷地も元々は林檎畑で、周辺には茅葺き屋根やそれを葺き替えた民家がぽつぽつと残り、夜は真っ暗に静まる素朴な環境である。 一方で近傍の河川が氾濫した場合には2mの高さまで浸水する恐れのある浸水想定区域であった。 のどかな風景のなかにあって自然な佇まいであること、浸水災害への対策、この2点がこの建築の在り方の大きな課題であった。 そこで駐車スペースを除いた敷地全面に大量の土を盛って高さ2mの人工の丘をつくることにした。てっぺんにケヤキの木を植えた手作りの丘は少しずつ周辺の草花に覆われて馴染んでいって、敷地境界線を感じなくなる。 どこまでが人工でどこまでが自然に形づくられたのかわからなくなっていく。 その丘のてっぺんにケヤキを避けて建築が置かれる。シンプルな水害対策だ。 深い軒の出の大きな切妻屋根がつくる斜面とそれよりも大きな丘の斜面とが一緒に外観をつくることで、風景の持つ大きなスケールと建築単体の小さなスケールとの隔たりが近づく。人工的な自然。あたらしいのどかな風景だ。 訪れた人々は2mの丘をてくてく登山して建物に入る。 外観の体験が連続するように内部は全て切妻の勾配天井とした。 テーブル席は天井が高く客席の床面積と同じくらいの大きな窓で外と繋がる開放的なスペース。 カウンター席は天井が低く壁面の小さな孔のような窓から外を眺めるこじんまりとしたスペース。 中庭は外観で見えていたケヤキの下でベンチに腰掛けて寛げるテラス席だ。 それぞれの空間が持つ建築的な性質を際立たせるためにテーブルや什器まで造り込み素材の仕上げを絞り込んだ。 オーナーご夫妻がアート作品やドライフラワーを飾り、料理やコーヒーの匂いが立ち込める空間でゆったり寛いだ人々は、丘をてくてく降りて帰っていく。 この12席だけの小さな喫茶店には、空間から風景までシームレスな空間体験の広がりがあり、それらの全てが人々の心象風景として残っていく。 ( 葛西 瑞都 )

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