
工場 大阪に次ぐ工業都市と言われる倉敷に,創業90年を迎える粘着テープ工場がある.粘着技術を駆使した製品を生産し続けてきた歴史ある工場だ.原料や製造した製品の搬出入の便を図る為に選ばれた広大で平坦な敷地のすぐ隣には,住宅地が広がり,工場の切妻屋根のいくつもの連なりがこの場所の独特の日常の風景になっている.その中に,第三撹拌工場という,唯一の2階建ての鉄筋コンクリート造の建物がある.2階の床には8つの穴があいていて,階段と荷物用エレベータ用のほかに,整然と並ぶ6つ穴がある.その規則正しさから,粘着剤の製造に使われた機械がその穴から頭を覗かせていたことを想像するのは容易であった. 屋根裏 広大な敷地を持つ工場にとって,2階建ての建物は必要ないだろう.製造ラインや保管・搬出入を考えれば,機能的でないのは明らかだ.体育館のような,がらんどうな平屋空間に対して,この第三攪拌工場だけは,材料を投入するためだけの機能的な吹き抜けをつくるために,2階の床が必要だったのである.工場の辺り一帯の地面をそのまま建物に引き込み,吹き抜けを挟んだ上階を,大きな明るい屋根裏にすることで,工場の中で新たな場所性を獲得できないかと考えた. 凝築 爆発に考慮された工場特有の,スレートの屋根とブロック積みの壁を取り払い,建築の骨格と縁を切るように,吹き抜けに柱を建てて,真っ白な大きな屋根をかけた.この建ち方は,減築でも,増築でも,改築でもない.古い建物を単に保存する計画でも,再生する計画でもない.この場所に,工場のこれまでの歴史と共に,倉庫,史料室,食堂,休憩室,会議室,駐車場といったいままで工場に点在していた場所を凝縮させることで,新しい工場を「凝築」した.ここが,新しい接着材を生産する工場になればと思っている.