
敷地周辺は昭和初期頃まで花町として賑わった場所であり、現在は古い下町の面影を残している。計画敷地はその昔町屋が建ち並んでいたこともあり、間口が狭く奥行きの長い、いわゆる「うなぎの寝床」の形をしている。課題は、周辺を民家に囲まれた間口7.8m・奥行31mの敷地をいかに有効に使うかであった。 夫婦2人の住まいであり広さは必要なかったため、延床は28坪に抑え、それ以外の空地に「前庭」「中庭」「後庭」の3つの庭を設けた。結果としてF字型の平面形状となり、奥行きの長さが野球のベース間と同じことから「塁間の家」と名付けた。 玄関からLDKまでの床はコンクリート素地仕上げとし、植物を置く温室空間となる。中庭の植栽と一体となり、緑に囲まれた空間が奥のLDKへと誘なう。LDKの床は斜め張りとし、「後庭」への視線を誘導している。「中庭」「後庭」を介して家の中を風が通り抜け、窓からは日の光が射し込む。季節の移ろい、日の出から日没までの1日の移ろいを感じる空間となった。 外装材、内装材には、私たちの理念である「地材地建」の考えのもと、地元の材である魚沼杉を使用している。月日と共に色が変わり、味わいが深くなっていく。「経年変化」ではなく、「経年優化」。新潟の下町という場所に馴染みながら、素敵に変化して行くことを願う。(西巻潤一郎)