
中崎町は、長屋や古民家が残る独特のたたずまいをもち、路地まではみ出して干された洗濯物や軒先に置かれた鉢植えなど、昭和時代にタイムスリップしたかのような懐かしさを感じる地域であるが、近年、周辺長屋が個々にリノベーションされ、カフェやレストラン、古着屋、雑貨店、デザイン事務所など様々な形態となっている。 路地の突当たりに位置するこのヘアーサロンも長屋の一室をリノベーションしたものであり、限られた空間の中に「カットを行うスペース」と「着付けを行う和室」が求められた。 ヘアーサロンでのカット中は、人目につくことを嫌がる傾向にあるが、前面道路を利用する人々が限定的という場所性を活かし、前面をガラス建具とした。 路地と同じテクスチャーで仕上げられた床、屋外から屋内に連続したコンクリートの基壇が基礎を連想させ、屋内空間を屋外化する。 また、このコンクリートの基壇はそれ自体が、カットスペースの棚や和室の床の間を形成するとともに、基壇の上に不完全な寸法であるヴォリュームや階段、収納棚を配置させることにより適正寸法を獲得させ、機能させる。 幾つかの棟で形成される長屋のように、幾つかのものが集まり成立していくことを意識した。 路地に解放されたインテリアとエクステリアが入り混じったこの小さなサロンがプライバシーを守りつつ、心地よく路地に開かれていくことを期待する。