夫婦と子供2人のための住宅。この住宅は空間全体の3分の1を階段室が占めている。敷地境界いっぱいまで東西方向に広げた階段室を敷地の真ん中に配置し、北側を居住空間、南側を陽当たりのよい庭とした。 階段室を大きく引き伸ばすことで、さまざまな視点や風景が生まれる。ゆったりと庭を望められる広縁や、外の通りに視線が抜ける書斎。陽当たりがよい手摺りには洗濯物が並び、吹抜けに響くピアノの音に耳を傾けながら、最上段にそっと腰を下ろすことができる。風がよく抜ける明るい階段室である。 階段は910mmピッチで両脇に並ぶ木の柱と、中央に並ぶφ16のスチールの吊り材によって持ち上げられている。踏み板と蹴込み板は50mm厚の集成材を互いにボルトで緊結させてフラットバーの梁の上に載せた。住宅のスケールに対して大きくつくられた階段室は、周辺環境や自然環境に対する緩衝空間にもなっている。林立して重なり合う柱によって、庭や近隣住人との関係を緩やかに繋ぎ、南面の大開口から差し込む自然光は、踏み板や手摺り、階段を支える柱やスチールの吊り材、柱に外付けされたアルミサッシのフレームなどの部材によって切り取られ、散り散りになって室内を照らす。 2階の寝室は、階段室に面してすべて建具とし、将来子供部屋に分割した際にも階段室から直接出入りができる仕様とした。1階のリビングは庭と連続して子供たちが自由にかけ回る。部屋らしい部屋は極力設けず、子供の成長や時間の経過に応じて移り変わる余白を残した。様々な変化が求められる日々の中で、明るい階段室は確かな存在としてこの住宅に同居し、時間を経てさまざまな暮らしの風景を記憶していくだろう。
メンバー
クレジット
- 設計
- KIRI ARCHITECTS、不動産:創造系不動産
- 担当者
- 桐 圭佑
- 施工
- シグマ建設株式会社
- 構造設計
- 株式会社DN-Archi
- 撮影
- 永井杏奈
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