人を曳きつけ螺旋上に巻き込み昇華する、そんな建築を目指した。 下町の構造が集積する東大阪市内、かつては貨物線であった高架線路の際に位置する。 人の営み行為、生活が混沌と交わるそんな艶めかしい街中に珈琲焙煎機を中心とし、その周辺を人のフローが巻き上がるプランを創り上げた。建物中心の四角いコアにはパン焼き工房やカフェのカウンターも鎮座し生産の場となる。それを求めにやってくる顧客や従業員、あるいは引き寄せられた周辺に住まい働く人々がコアにまとわりつき上昇する。建物は透明化され渦巻くスロープや生産のコアが視覚化し、機能や人々のフローが周辺に意味を発する。一度この渦巻きを見たものを建物内に誘引する。 当初から、創業者はここに住まうことを前提に、新規事業となるカフェと高級食パンの工房を設置することを条件としていた。自らが住まう場所ではあるが「インスタ映えする」すなわち人々が思い描いた心象風景のような人の行為からなる渦が上昇し、ある姿が呈される場を求めていた。事象は人のフローが定着されたような偶発のイベントであり、物を作る上での作意としては直方体のキューブを設定し、そこに人のフローが巻きつくさまを定着させる。それだけである。形を創るのではなく、そこに現れるでき事を意識した。 ただし、フローを定着するにはあるオーダーが必要となる。コア、スロープ部の階高基準をそれぞれ4.5mと3.0mとし、スロープの勾配は1/12とした。スロープはコアからのキャンチレバーによって支持され、いかなる機能がやってきても柔軟にスロープの幅や勾配は調整される。 機能や人のフローと同様に環境のフローということも強く意識している。ガラスを透過し進入した太陽光線はスロープ部の床と気積を熱し、上昇気流を作り出す。涼しい外気が地表に作られコアの地窓から侵入し、建物内の吹き抜けを勢いよく上昇し、換気窓とコア最上部の可動窓から排出される。常に、建物内と外気の間での循環がおこる仕掛けを作っている。太陽光線は室内環境を熱くブレークするものではなく、空気を循環し、自然な換気を促すエンジンとなる。冬季は太陽高度が低く、特に太陽光線の受容が大きくなり、スロープの南側は温室状態となる。換気窓を開放すると窓上に蜃気楼が舞うほど空気を温めることとなる。 スロープの床はデッキの上に構造合板を貼っただけだが、そこにオイルステインを塗り、床をキャンバスに見立て設計事務所のメンバーで絵を描いた。多様性が上昇していく渦がそこにある。 すべての機能がむき出しで視覚化され融合する。むき出しであるがゆえにそれぞれの機能が生き生きと豊かな統合体として見えてくる。人々は意味が見えるところに惹きつけ られる。 あらゆるものが周辺から集まり、渦巻き飛翔するそんな、フローの建築、Naked Spiral を作った。