天六マチヤ

ビルディングタイプ
その他住宅

DATA

CREDIT

  • 設計
    榊原節子建築研究所
  • 担当者
    榊原節子
  • 施工
    株式会社 岩鶴工務店
  • 構造設計
    tmsd萬田隆構造設計事務所
  • 撮影
    小川重雄

町屋を縦に再構成する 敷地は大阪・梅田に近い幹線道に面し、人や車の行き来が多い一角にある。地元で「天六」と呼ばれる、天神橋筋6丁目交差点まで徒歩数分。古くには町屋が建ち並び、「商いながら暮らす」人たちが集まっている活気ある土地だ。その戦前から残る町屋のひとつで代々カメラ店を営む一家から、このたび建て替えの依頼を受けた。 計画にあたっては、従来の店頭販売や写真現像サービスに加え、複数の撮影スタジオと家族4人の住まいを兼ねたものにとの要望があった。町屋は往来側に「みせ」を構え、通り土間や庭を挟んで日常生活空間である「おく」へとつながるのが一般的だが、今計画では道行く人々が立ち寄る1階を店舗とし、上階に行くほどに私的性を帯びていく構成とした。 ファサードは、1階店舗、2階スタジオ部分は内外を可視化させるためガラス面とし、3、4階は外壁を張り出して閉じつつ、住居スペース前に「光庭」として外部環境を取り込むバッファーゾーンをつくった。各階を通り土間のようにつなぐのは、1階から垂直に伸びる螺旋階段。上階の住居から階段を下りるごとに各フロアの私的な空気は次第に薄れ、スタジオや店舗そして街といった外部の色が濃くなっていく。日々の上り下りによって、「おく」~「みせ」への遷移を体感しながら、自分たちが暮らす街を俯瞰的に望み、外界に馴染んでいくような感覚を呼び起こす。 内部は、限られた平面の中で様々な視線の抜けをつくりだすため、床レベルをずらす構成とした。目に映る風景や光などの外部要素、他スペースへの見通し、どこに居ても感じる他者の気配など、多様な繋がりや広がりを生み出している。天井高にも高低差を設けることでフラットな場にはないニュアンスを生み出し、撮影スタジオとしての可能性を広げるだけでなく、将来に向けて色々な使い方ができる柔軟さに配慮した。 加えて外部を取り込む装置として、住居部分の中心を3.4m×4mのガラス屋根の吹抜けとし、光が降りそそぎ、空の見える「にわ」をつくった。この吹抜けを取り巻くように各スペースを結ぶ階段を設け、中庭を立体的に散歩するような動線とした。階段は屋上へと伸び、外に出ると街が一望できる。 先々代からの店を引き継ぎ、住まい手家族の職住ともに街に根ざした暮らしへの想いを受け、「みせ」「おく」「通り土間」「にわ」を縦に再構成することで、新しい「マチヤ」をつくることを考えた。   

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