築25年の集合住宅の1室をリノベーションしたプロジェクトです。 建主の奥様が新たな住まいで求めたのは、広いキッチンで家族のために料理をすることでした。元々キッチンのイメージがすでにあり、その理想を実現するためにお手伝いをさせていただいたと言っていいかもしれない。 予算が厳しいプロジェクトで、さらに設計から引渡しまで2ヶ月しかなかったため、設計と工事期間を3ヶ月に延ばしたり、予算を含めて色々なことを工夫して進めたが、既存の建物には断熱材が入っていなかったので、断熱改修はするように勧めた。予算のことを考え水回りはほぼ動かさないようにし、お風呂はいじらないことにした。元々の間取りは2DKで、トイレと洗濯機スペースが間取りの中央部にあったため、その周りに部屋を配置し回遊できるようにしどこからでもアクセスしやすいプランとし、キッチン・ダイニング・リビングを1つの部屋としている。元々の天井高が低かったため、天井を剥がして天井を高くしようとしたが、建物の構造が鉄骨造で被覆の断熱材が綺麗ではなく、また賃貸物件ということもあり、新たに天井を張ることにした。その際に、入り口と水回り付近は上階の配管があったため天井高を低く設定し、リビングダイニングは開放感を感じて欲しかったのでギリギリまで天井を高く設計して、天井高に変化をつけている。 建主のキッチンのイメージは、ステンレスのキッチンとステンレスのレンジフード、そしてキッチンの壁はモルタルにしたいということが譲れない条件でした。予算が厳しい中でもこだわりを持っていらっしゃる建主だったので、フローリングは幅広のナラの無垢材。天井と壁の建主の理想はコンクリートだったが、鉄骨造ということもあり当初からそれはできなかったため、理想に近づけることと、室内環境を考え、自然塗料の中からモルタルに近い色を選び、グレーとホワイトで塗装することにしたが、天井と壁は建主が自らDIYで塗ったものだ。工事期間中に塗らなければいけなかったので、工務店が休みの間に塗ってもらった。 予算も工期もかなり厳しいプロジェクトだったが、引渡し後にお子さんが楽しくぐるぐると走り回っているのを見たり、建主が楽しくキッチンに立っているのを見ると、お手伝いをさせていただいてよかったと思う。

クレジット

  • 設計
    大畠稜司建築設計事務所
  • 担当者
    大畠稜司
  • 施工
    関内建匠
  • 撮影
    石川望

データ