
東生駒は生駒山地や矢田丘陵などの山々に囲まれた山間にあり、所々に自然が残る。近鉄が宅地開発をし、近鉄奈良沿線で学園前と並ぶ高級住宅地である。 計画地は沿線の北側、大規模な開発を逃れた小高い丘の中腹にあり、車1台がやっと通れるほどの急な坂道を北に上る。 敷地は南側の大半が傾斜地であり、北側にわずかに残された平地に小さな平屋の古家が建ち、敷地の北側には小さな緑地が残っていた。 造成することもできず取り残されたような、この場所性を生かした計画ができないものかと考えた。 アウトドア好きの施主の要望は「ウッドデッキのある平屋で、ロフトを寝室にしたい」というものであった。残された平地は平屋で要望を満たすには小さく、一通り組み上げると2階建てのボリュームとなってしまう。そこでロフトの寝室を元に、各場所の床レベルを変化させることで高さのボリュームを抑えていくことにした。 書斎から吹抜へ腰かけると、南側の斜面、振り向くと北側の緑がみえ、まるで丘の中腹に腰かけているような錯覚を覚える。 ダイニングの窓を開けると丘に沿って心地よい風が吹き、建物に遮られることなく北側へ流れていく、北側からは小鳥のさえずり、この辺りの主と思しき猫の気配が流れ込んでくる。 丘に寄り添う、内部空間と外部の地形が繋がっていくような建物となった。
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