桜坂の自宅

ビルディングタイプ
戸建住宅
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PROJECT MEMBER

DATA

CREDIT

  • 設計
    ICADA、九州大学岩元真明研究室 温熱環境エンジニアリング:東京理科大学高瀬幸造研究室 家具構造設計:XYZ structure 照明デザイン:モデュレックス福岡事務所 断熱実験:東京理科大学高瀬幸造研究室、旭化成建材
  • 担当者
    岩元真明
  • 施工
    イクスワークス
  • 撮影
    八代写真事務所、高野ユリカ

福岡市中央区における築33年のRC造マンションの一住戸改修。一般的なnLDK住戸では家族形態と平面計画が一対一に対応する。しかし、家族は刻々と成長し変化してゆくものである。今は小さな子供たちもそう遠くない未来に家を離れるだろう。子が去った後の空間は夫婦が使うのが合理的だが、nLDK住戸の細切れに分割された子供部屋は扱いにくく、いつしか埃っぽい段ボール箱で溢れてしまう。 そこで、家族の成長にあわせて1LDKから4LDKへと伸び縮みする家を考えた。寝室は3台の可動書架で仕切られ、各個室の空間配分は自由である。居間に面するポリカーボネート引戸を開け放てば、家全体は大きな一室空間になる。ただし、家は住み手・空間・モノの3者の関係の上に成り立っており、モノの行き場がなければ空間は変化できない。ゆえに、家族全員の衣類とモノを集約するコモン収納を居間に設け、寝室の可変性を担保した。 素材とディテールについては実用性・即物性・経済性を重視し、細部に3Dプリンターを活用したミニマルなポリカ引戸、波板を転用した鴨居敷居、アルミ複合断熱材による反射天井、鋼材からなる片持ちのピボット照明など、ありふれた材料を再解釈して設計を行った。 断熱改修については、隣戸境界を含めて壁・床・天井を断熱材で包みこみ、一部の既存サッシをペアガラスに変え、高い断熱性能を確保した(HEAT20 G1相当)。RC造マンションの断熱改修では壁体内結露が発生するか否か、検証した事例は少ない。そこで、室内および壁体内に温湿度センサーを組み込み、結露に関する実証実験とデータ解析を行っている。空調は2台のルームエアコンを居間と寝室に設置した。寝室を多室に分割した場合、暖房時にやや温度ムラが生じるが、夫婦の老後に可動書架を動かして間仕切りを減らせばムラは解消される。ライフステージの変化に伴い、温熱環境も変化させてゆく提案である。

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