町家型と納屋型の複合としての住宅 川口市が進める都市計画に伴って近隣から移転することになった店舗付き二世帯住宅の計画。宅地化の進行により狭隘化した道路の拡幅を目的とした新旧2つの区画道路の角に面し、今後も車や自転車、歩行者の通行の増加に対応したプライバシーの確保が必要な敷地である。かつ敷地の長手が西向きであり、西日への配慮も必要だった。 クライアントの家族は、親世代がガラス店と茶道の教室、子世代が書道の教室を営んでおり、移転後も続けることが決まっていた。今後も地域の店や教室として継続する強い意志を感じた。また、バリアフリーへの配慮から老夫婦は1階、子世帯は2階に単身で住む。つまり1階の要求が多く、2階は必然的に「がらんどう」になる。それらをどう統合するかが問題だった。 そこでヴォリュームは、1階の最大化されたフットプリントが、敷地の隅切り形状も取り込みながら2階に行くに従って小さくなる寄棟形状とした。また、密集市街地であることから、この建物が建つことで周りが暗くならないよう、屋根勾配を大きくして軒を低くした。このことで2階内部のがらんどうの周囲に、高さ1.4m程度の親密なスケールが生まれる。 窓は西日への配慮で1階は高窓、2階は地窓となるような中間の位置に設け、外から見ると何階建の建物かを窺い知ることができないようにすることで、プライバシーを確保した。東側は、1階は拝見窓、2階は天窓とし、隣接する住宅の窓と見合わせないような位置に設けた。 そこから内部のプランを組み立てたが、結果的に1階は店の奥に細長い水回りがある町家のような形式、2階はがらんどうのワンルームを引き戸で仕切った納屋のような形式となっていることに気づいた。それぞれの慣習的な形式を現代的な住宅に応用することには馴染みがあったが、2つの形式を並置し、それらを統合する中間的要素として窓を用いたというのは、単なる偶然ではなく、このような手法こそが現代の暮らしに対応した新たな形式を生んでいくように思われる。この慣習的な形式の並置と統合についてもう少し考えていきたいと思った。