【地上16mの敷地】 築40年の中古マンションのリノベーション計画です。 マンションという限られた面積と開口による採光ですが、ただ内部を更新するだけではなく、周辺環境や建物のつくりをしっかりと読み解き適切な計画をすれば、地盤に立つ建物同様に住環境を向上させ、さらには建物全体の価値を向上させる事ができると考えました。 マンションの専有部は個人の財産ですが、同時に共有財産でもあることを意識しました。 フルリノベーションは実はマンションにとって負担の大きい工事といえます。 特に、共有部のインフラへの負担を最小限にするため、水回りの移動を制約条件としています。部屋全体を床先行の施工として、将来の可変性を残した上で、部屋を「大きな家具」として軽やかに配置することで、緩やかに部屋全体がつながり、外部の環境を均質的に取り入れることが出来るような計画としています。 結果として北向きの部屋ですが3面採光というメリットを生かすことで、1ROOMのように風と光が全体に届く空間を実現することが出来ました。 【限られた外部を最大限取り入れる】 室内は「狭い」を効果的に活用することで、施主が希望した「食事中心の生活」のための4mの大きなダイニングテーブルを象徴的に計画しています。さらに、寝室兼ロフトをLDKに併設することで、主要な活動範囲であるLDKをよりゆとりのある空間に設えています。 このLDKに接した寝室という間取りは、時代によって変化したライフスタイルの産物ではないかと考えます。 さらには、玄関と廊下を一体化した玄関室は、その後に来たる「コロナ禍」と「リモートワーク」に計らずと活躍する部屋となりました。 【未来に紡ぐリノベーション】 内装建材はプラスターボードなどの新建材は用いずに、とても身近に手に入れる木材やセメント建材を中心にデザインしています。リノベーションは新築住宅などとは異なり、コストを抑える事自体が与条件になる率が高くなる傾向にあります。コストを抑えつつも、既視感や安っぽさを感じない、「身近に手に入ることができそうだが、半歩先のリノベーションデザイン」を目指しました。 リノベーションはこの10年で飛躍的に認知され、次の時代の住宅スタンダードとなります。そうなるとリノベーションは消費の渦に飲み込まれていく可能性が高くなりますが、住まい手のわずかな「自分らしさ」が日本の住環境をより良くしていくと考えています。 専有部という限られた敷地ですが、考え方と設計手法で永く続く住まいになることを意識しました。
チーム
メンバー
クレジット
- 設計
- リノベる、内装:ディライトハウス株式会社、家具:FLUM、金物:林装飾工芸、床材:田中製材所
- 担当者
- リノべる 天野慎太郎
- 施工
- リノべる株式会社
- 撮影
- リノベる 天野慎太郎
データ
- ビルディングタイプ
- 共同住宅・集合住宅・寮
- 工事種別
- リノベーション
- 竣工
- 2017-04