
予算が理由で新築をあきらめ中古住宅を探していた若いご夫婦と出会い、蜜柑栽培が盛んで年間を通じて温暖な地域である古い分譲角地に、小さな住まいを計画することになった. 量産住宅が土地を埋め尽くすように建ち並ぶ環境下で、敷地は街のなかの公園のような「庭」そのものと捉え、その余白に住まいを構成することで暮らしと風景に普遍的な大らかさが生まれるのではないかと考えた.庭の起点となる植栽を植え、計画敷地の将来的な庭のあり方を想定しながら、想像の庭の余白に小さな住まいを計画した. 住まいは、居間棟、食堂・台所棟、水廻り棟の3つのヴォリュームを寄せ集め、小さなスケールでありながら奥行を与え、大らかな空間となるようにした.ディテールは、開口枠や掃き出し窓の框を消した納まりとし風景をとりこむ.開口部位置や垂壁幅、素材を統一した上で、場に応じて寸法をあえて崩すことで、場と庭とのつながりをつくり、木々の成長や葉の揺らぎによって時間と共に変化していく居場所の質が形成されるよう試みている. 分譲地でかつローコストであっても、建築と庭の関係性を再考することで見えてくる豊かさが、その住まいの暮らしだけでなく、周辺地域全体に浸透していくことを願っている.
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