城下町の客室

ビルディングタイプ
ホテル
1
484
日本 三重県

PROJECT MEMBER

DATA

CREDIT

  • 設計
    きりん サイン・アートピース:やまほん設計室 造園:庭アトリエ 製作照明:Bowl Pond Platz 家具:西川木工、tickle27
  • 担当者
    武保学
  • 施工
    あづま工務店、森本建築、特定建設工事共同企業体、ドリームリフォーム
  • 構造設計
    川端建築計画
  • 撮影
    山内紀人

古い街並みに残る町屋をホテルの客室に改修する計画である. 徒歩5分ほどに位置するフロント棟で鍵を受け取った宿泊客は、街の雰囲気を味わいながらこの建物にたどり着くという「分散型ホテル」の形式をなしている. 設計前にここを訪れたとき、敷地に建つ築180年を超える建物群は長い歴史を感じさせた. しかし昭和時代のリフォームによって新建材で覆われており、建物内部は新旧がいびつに混在する状態であった. 今回「建物が生き生きと使われていた時代に戻していく」というホテルのコンセプトに基づいて建物の触り方を決めていった. 傾いていた蔵はジャッキアップすることによって補正し、コンロの下に隠れていたオクドさんは当時の暮らしを偲べるように展示した. 囲炉裏の煙抜きはリフォーム時に瓦で塞がれていたが、ガラス瓦に交換することによって半世紀ぶりに室内に光を落とした. また新建材をはがして現れたオリジナルの仕上げを出来るだけ残すと同時に、新設部分も既存の板材や伊賀の土による左官など、この場所にゆかりのあるもので仕上げている. 建具はここにあったものを活用し、洗面台には箪笥を転用した. 建物の歴史に寄り添う手法は、新しい部分と古い部分との「差異」をどう見せるかということにも表れている. 新しく使う木材は基本的に「赤身」に限定した. 一般的に入手しやすい「白太」の材が多く使われるが、「赤身」に限定することによって新設部分と既存部分とがどことなくまとまった印象を生み出す. 「白太」によって新旧を対比させるのでも、「白太」を塗装することによって既存部分に無理に近付けるのでもない、対比と調和のゆらぎの上に空間の秩序を位置づけた. ここを訪れた人が「新しい部分と古い部分の見分けがつかない」と感じてもらえればこの試みはうまくいったのではないかと思う.

物件所在地

1