two house

里山が広がる地域に、クライアントのおばあさんが独りで暮らしていた. おばあさんの生活を見守り、かつ家族の生活を成り立たせる方法を考えた結果、 おばあさん宅の向かいに小さな家を建て、その間を行き来する「1.5世帯の暮らし」にたどり着いた. 決め手はこの地で何十年も営まれたおばあさんの生活を極力変えないということだった. おばあさんの家は緩やかな丘の上に位置しており、そこから遠くの山々を眺めることができた. しかしこの家が建つことによってその景色の広がりを遮ってしまうことが懸念された. そこで今までの開放感を少しでも残せるように建物を分棟形式とし、その間に外部空間を設けることで視線の抜けをつくった. 外部空間はおばあさんの家の玄関先から奥に広がる山の端を感じることができるよう寸法を決定している. この外部空間は「つなぎの間」と呼ばれ、ここを経由しながら生活が展開する. 食事をしたらつなぎの間を通って居間へ. お風呂に入ったらつなぎの間を通って2階の寝室へ. 常に外部が密接に関わり、日常生活と周辺環境との結節点が生まれている. 緩やかな暮らしの分節は、生活スペースと仕事スペースの分離、来客時における公私の分離、また家族同士の距離感の調整に寄与する. 2階も含めて全ての窓を掃き出しとすることによって、家のどこにいても豊かな自然が家の中に溢れ、身体がこの場所に溶け合うような一体感を得ることができる. 雄大な地球環境に包まれていることを感じさせるこのような「開かれた家」のつくりが、 住み手と大地との関わりを鮮明にし、安心感につながるのではないかという期待を持っている.

チーム

メンバー

クレジット

  • 設計
    きりん
  • 担当者
    武保学、安江一平(ワークショップ)
  • 施工
    最上工務店
  • 構造設計
    ワークショップ
  • 撮影
    山内紀人

データ