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ビルディングタイプ
その他オフィス・企業施設

DATA

CREDIT

  • 設計
    WANKARASHIN、ロゴデザイン:草草社、設備:出口興業株式会社、電気:近藤電業、建具:山口木工所、左官:這越左官
  • 担当者
    石飛亮
  • 施工
    小田大工、くらす企画
  • 構造設計
    東郷拓真 / 1050 Architects
  • 撮影
    大竹央祐(内観)/平山忍(外観)

街を編む拠点 元毛糸店をシェアキッチン、コワーキングスペース、短期滞在の賃貸、イベントスペースなどの複合施設へとリノベーションするプロジェクト。 五島列島は美しい自然や豊かな食資源があり、2018年に世界遺産に登録されたことも追い風となり近年注目度が高まっているエリアである。しかしその一方で人口流出や少子高齢化が顕著な地域でもある。最も人口の多い島である福江島も例外でなく、中心地である商店街でもシャッターを閉じたままの店舗が目立ち、道ゆく人も年々減っているような印象を受ける。 離島である福江島では、ある程度島内で自活するシステムが要求されるため、第一次産業に従事する人も多く、またその入手可能な資源をいかに使い倒していくかという工夫が生まれてきた。都心のように生活環境としてすべてが揃っているわけではないからこそ、無いものは作るというような精神が島民には宿っているように感じる。それゆえに肩書きに捉われずさまざまなスキルをもった人が多い。 しかし現状、その多様性に対して建築空間が追いついてない。民家は民家らしく、店舗は店舗らしくといった具合に、用途とビルディングタイプが画一的に紐づけられてしまっている。単一の用途に縛られず、さまざまな用途を包括できるような空間をみんなでシェアすることで、自身のもつスキルで気軽にチャレンジすることが可能となる。またそういった場が同じ空間内に複数同居することができれば、普段出会えない人同士の交流の場としても働くだろう。 島で不動産業を営む建主は、商店街近くの元毛糸店兼住居を購入し、当初は自身の事務所と住居として利用しようと計画していた。しかしその立地のよさや建物の規模から、時間貸しのキッチン付きシェアスペースとして活用できないかと考えた。 設計を始めたのはちょうど新型コロナウイルスが蔓延し始めた時期であり、空間をシェアすることと人同士が一定の距離を保つという矛盾するようなことを同時に考える必要があった。そこで奥行きのある建物の形状を生かし、中央に長いカウンターを貫通させることで、それぞれ別の作業をしていても十分な距離を取ることができ、お互いが気にならないような空間を用意した。また奥は可動テーブルになっており、用途に合わせて空間を伸び縮みさせて対応することができる。 この場所で試行錯誤を重ねた人たちが将来的に商店街の空き家などを活用し、自身の拠点をつくっていくことができれば、この街の風景は一変するだろう。この建築は、人と人が出会い、人と街を繋いでいくような、街を編む拠点となっていくことを目指している。

物件所在地

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