敷地は天王寺から自転車で数分の距離にあり、古くからの地域住民の繋がりが残る大阪市内には珍しい歴史の面影(環濠集落)のある街並みです。 エリア特性を調査する中で、近くにある神社のお祭りには、前面道路に地車が賑やかに練り歩き、横の公園では縁日もでて活気があるエリアの中心的な役割を担っていることも分かりました。 「このような地域に建つシェアハウスの相応しい姿は、街に閉じたワンルームとは違い、地域と緩やかにつながる建築が望ましいのではないか?」 クライアントと打合せを重ねながら、地域に受け入れられる施設の姿と、事業の持続可能性に留意した魅力的な空間を併せ持つ建築を模索していきました。 約100坪ある敷地の魅力を最大限に高めるため、「開く / 閉じる」「プライベート / パブリック」「開放性 / 居場所」といったキーワードを中心に、事業採算のベースとなる17名が暮らす個室部分だけではなく、その余白となる共用部も一体的に計画しました。 奥行方向が長い敷地形状を生かし、建物配置をL字型とすることで出来た中庭を、住人たちが自由に使える外部空間として位置付けました。菜園などができる余白を残した中庭からパーゴラのある開放的なテラス、そして床レベルを下げてテラスに近づけたダイニングスペースが繋がり、屋内から屋外へ自然に流れるような居場所の構成を試みています。 また、立体的で奥行き感のある場の構成や見え方、階段の上下移動の視線の動きにも配慮し、中間領域や移動空間も居場所になるようスタディコーナー、ライブラリーコーナー等の様々な居場所を点在させています。 道路に面した位置には比較的パブリック度の高いキッチンスペースを配置し、道路に向けてあえて大きな開口部を設けることで、住人たちが皆で行う炊事のシーンも街の風景の一部となるのではと考えました。 庭遊び、気持ちいい屋外での食事、心地よい公私の距離感、皆で愛し育てる空間、というこのシェアハウスだからこそ叶えられる日常を沢山詰め込んでいます。 住まい手たちの暮らしぶりから自ずとコミュニティーとの接点が生まれ、地域活性へと緩やかにつながるような魅力をもったシェアハウスを目指しました。