PROJECT MEMBER
この二世帯住宅は、敷地の南側と東側をお茶の水女子大学に隣接している。 長く続く私道を登り切り、緩やかに勾配のついたアプローチを経て、エントランスへと至る。 1階は事務所、2階3階は各世帯の住宅となっており、エントランスホールから階段室へと至る扉が、居住エリアと仕事エリアを隔てている。 時と共に風合いが増すような素材感を求めて、粗い触感のせっき質タイルと、木サッシの組み合わせを外装とした。 職人の手作業によってできた、一枚一枚色ムラのあるタイルと、広葉樹の木サッシ枠は、均質な工業製品では決して得られない味わいを持つ。 家族が集う食堂を核とし、その周囲に居間、厨房、座敷といった異なる性質の空間を配置した。 居間を天井の高い開放感のある伸びやかな空間とし、座敷を天井の低い包まれたような空間とした。 そして厨房を、これらの室を見渡すことができる位置に据えた。 こうして有機的につながった一つの室内では、家族各個人がばらばらなことを行なっていても、お互いの気配を感じ取りながら、適度な距離感を保つことができる。 高気密外断熱を採用しつつも、非空調時の南北通風確保を前提に、住戸の間取りや開口位置を検討した。 借景となる大学敷地の緑に加え、開放的な屋上庭園においても、四季の移り変わりを楽しむことができる。 新建築 住宅特集 2011年5月号掲載