ESR横浜幸浦DC1 KLUBB エリア

COVID-19により人々の生活様式が変化したことで、eコマースが急伸し、インフラである物流施設の需要は増している。本件は33万㎡という広大な敷地に4期に渡って計画されている物流施設の1期目で、首都圏最大規模の延床19.6万㎡を誇り、南北2箇所にラウンジが設置されるなどアメニティスペースの拡充が計られた。敷地内の「⾦沢の森」は30 年ほど前に植樹されたものだが、荒廃が進んでいた為、ランドスケープデザイナーの手によって再生された。さらに地域のシンボルとなるべく、タカトタマガミデザインがそのファサードデザインを担った。 ・ファサード マルチテナント型の施設としてレンタブル比をもとに緻密に計画されていた本体の外壁に大きな変更を加えることは難しく、装飾的な何かを外壁に付加することに可能性を求めた。ロースの『装飾と罪』が頭の片隅をよぎるが、現代において装飾はアイデンティティを示し差別化という機能を担うという側面にフォーカスした。そこで港の立地性を象徴する波や風をメタファーとし、経済・社会のインフラとしての需要が急激に高まった「物流」という物の動きや躍動感を発信するリボン状の装飾でファサードを覆った。リボンには銅色のメッシュ素材を採用し、電球色のライン照明を仕込むことで視認性を高めた。これは一方で、近隣の工場の煙突が吐く炎や夕日にも色調が馴染む。工業地帯の新しい風景の一つとして親しまれて行くことを期待した。 ・KLÜBB Lounge NORTH 北ラウンジ KLÜBB Lounge NORTHの眼前には工業地帯の向こうに横浜港の煌びやかな景色が広がる。一方、眼下にあるのはこの施設のシンボルである「金沢の森」である。そこにも意識を向けるよう、KLÜBB Lounge NORTHでは鉛直の指向性をもった空間を目指した。切り込みを入れた天井の一部を垂れ下げるかのように壁へと変化させる操作で緩やかに空間を仕切った。垂れ壁の一部はベンチやカウンターへと変化させている。こうすることでどこにいても同素材で包まれたような空間となり、洞窟のような落ち着きが得られるよう意図した。さらに天井高や垂れ壁間の幅を様々にすることで場所毎に居心地に差異が生まれるようにしている。窓際の天井は眼下の金沢の森のアクティビティを映しだすようミラー天井とした。これはすなわちラウンジのアクティビティもまた金沢の森へと届けられることを意味している。 ・KLÜBB Lounge SOUTH 南ラウンジ KLÜBB Lounge NORTHの鉛直の指向性に対し、KLÜBB Lounge SOUTHは奥行きへの広がりを指向する空間とした。ファサードを踏襲するようにリボン状の造作を2本エレベーター ホールから奥へとぐるぐると旋回させるように設えた。リボンには木目と金属という異なる質感を与え、その間にライン照明を仕込み、対比を際立たせることでその動きを強調した。 このリボンは壁として、床として、天井として変化しながら空間を緩やかに仕切り、様々な居心地の場を生み出す。そして時にはカウンターやベンチのような居場所をつくりながら階段へと変化し利用者をスカイデッキへと導く役割を担っている。 ・BARNKLÜBB 託児所 本施設の1階床レベルは津波・高潮対策によって地表より3mの高さに設定されている。BARNKLÜBBはこの1階にあり、金沢の森の正面に位置する。つまり一般的な建物の2階に相当する高さから眼前に森を見渡すことができる。その借景をより印象的に見せる為、間口いっぱいのフルハイトサッシを設けた。保育室の天井には森の瓢箪池をモチーフとした船底天井もとい池底天井を設けた。『金の斧』など水の底池の底に想いをめぐらす物語は多い。屋外の森や園庭には遊具や自然に触れる場があり、冒険心を育む要素を十分に備えている。それに対し保育室内は子供達の思考を育む場として位置づけた。

クレジット

  • 設計
    タカトタマガミデザイン 家具工事:アルク 照明器具:ウシオライティング、エイテックス
  • 担当者
    玉上貴人、中川隆太、倉下美佐子
  • 施工
    塩浜工業
  • 構造設計
    塩浜工業
  • 撮影
    吉村昌也

データ