PROJECT MEMBER
住宅街にある美容室の内外装計画。 計画地は、十字路に面した建物の1階角地で、数年間シャッターが閉まっていた区画。 シャッターを開けると、風や視界が抜ける魅力的な二面開口であった。 ただ東側はガードレールで区切られた歩道だが、南側は白線だけの路側帯で、 歩行者のそばを車が通ることや、時間帯によっては信号待ちの人が溢れるなど、少し危険な状況だと感じた。 店を任されたのは近所にお住いのご家族。 仕事と生活が地続きとなり、街や住民との関係が親密になることが想像された。 そこで街や住民に寄り添った店の在り方を模索した。 周辺環境は、駅から続く遊歩道や公園など街の余白が多くあり、住民がうまく利用していた。 その環境に倣って、一般的には区画いっぱいに外壁を立て店内を最大限広くするところ、外壁をクランクさせながら立てることで区画内にも余白をつくった。 機能としては、人が溜まれる場所(※)や通り抜けの道となっていて、前述した危険な状況の緩和にも繋がっている。 また美容室としての用途にも丁寧に応えるために、店内の使い勝手やゾーニングも同列で検討し、内と外の機能が噛み合う構成とした。 店の特徴となった外壁は、部分的にセットバックされたことで佇まいが柔らかくなり、繋がった二面のファサードがまとまった印象を作っている。 また美容室の特性上、外から見えすぎないことも重要なので、窓は正面ではなくクランクさせたことで生まれた側面に設け、光を効果的に取り込もうと試みた。 外壁の仕上げは一般的な住宅でも使用されるガルバリム鋼板。 色は既存シャッター同色のアイボリーとし、そのまま店内まで引き延ばした。 入口扉や家具は、既存屋根瓦の茶褐色に近いニヤトーとした。 既存から色を引用したのは、数年間シャッターが閉まっていた状態を急に変えるのではなく、少しの変化で街に調和させることを考えたからだ。 住民との直接的な接点を持つため、待合には受付カウンターではなくテーブルを置いているが、 今後は接点を増やすため、外の余白にベンチなどが置かれ、街に合った形で使われる予定だ。 当然だが余白部分にも家賃が発生しており、店内を広くする方が経済効率は良いが、 店が余白を持ちながら街や住民と関わることは、住宅街の店として長く愛される上で効果的な方法ではないかと思う。 (※)便宜上はポーチと駐輪場としている