刻々と変化する銀箔のゲート 商業ビルの内部共用部とファサードのリニューアルプロジェクトである。 敷地は川崎市を代表する歓楽街の仲見世通りから程近いところにある。 地上に面する階には美容院が入り,上階は個人経営の小規模な飲食店舗が入る。 着手前の建物は、看板に侵食されたファサードという印象であった。 それら看板を取り去り立派な螺旋階段が姿を現した時、我々は看板に勝る建物の持つ大きな個性の発見を感じた。 また、看板を支持していたH鋼フレームがこの建物ファサードに設置されていたので、このフレームを頼りに、昼夜で別の表情を持つ 新しく迎え入れるゲートの様なファサードを検討した。 ファサードのメインの素材であるパンチングメタルは、 反射と透過という相反する2種類の表情を形成するには最適な素材であり、重量面や耐久性にも優れており既存躯体にも影響を与えにくいと判断した。 このパンチングを折半し、施工可能な寸法範囲にてゆらぎと奥行をもつ立体的な面を形成し、さらに2種類の開口率で組み合わせることでファサードの陰影を助長させた。 こうして生まれた銀箔の様なゲートは、時に空の色を広い、直接日光が当たればどこまでも透過する。 またこのゲートにはプログラム制御された光の仕掛けを内包しており、 夜になればパンチング越しに立体的なレイヤーを通じ光輝く事で宴の始まりを知らせる。 スマートフォン時代における看板の在り方とは何だろうか。 少なくともここでは、昼夜柔軟に輝くシンボリックなファサードが ネオン看板よりも相応しいと考えたのである。