地域に開き繋がる、地域のコミュニティハブとなる施設を目指して                   千葉市に建てられた障害者支援施設である。従来の支援施設は、障害者側の視点(生涯を過ごす場所)ではなく管理者の視点(監視しやすい場所)での施設作りが多く、近隣地域に対して、環境も空間も閉ざされ、場所性を持たない孤立した病院のような施設が殆どであった。本施設は、生涯住まう「家」として、家庭的な生活の場作りに配慮し、地域に対し閉ざすのではなく、開き、多様な人々が気軽に集まる事が可能な、地域コミュニティの拠点となる、支援施設の新しいあり方を目指し計画した。 これまでは80人程度のひと纏りの空間構成で、集団生活による精神的負荷が大きかったため、居住空間を6つのユニットに分ける計画とすることで、精神的負荷を低減し、より手厚いケアの実現を図った。ユニットは縁側廊下で柔らかく繋がれた分棟形式として、地域のスケールに合わせた集落の様な佇まいとした。 本施設は大規模な障害者支援施設として国内初の木造建築として計画し、躯体の芯から伝わる温かみや優しさを感じ取れる空間(構造)とした。また、木が持つ実質上の効果「癒し・調湿・抗菌作用等の効果」で、これまで課題であった精神面からくる破損行為、免疫力不足による感染病発症リスクが改善される環境を目指した。 平面計画は、障害者が安全に、かつ拘束されない自由な活動ができる計画とした。 動線の軸となる縁側廊下には、廊下+αのサイズを持たせた留まれる場を設け、障害者自身がその時々の心理状況に合わせて自由に選択できる多様な居場所を整えた。また、縁側廊下に囲まれた中庭に、管理者の帯同なしに自由に行き来可能な環境を作った。 高低差のある敷地でありながら、段差のないワンフロアな計画により、避難時は身体的不安定な利用者でも、安全に避難が可能であり、管理者の負担減にも繋がっている。  破壊行為の多い施設の為、更新が容易なシンプルなディテールを心がけ、維持管理が簡易にできる様に配慮した。 地域との繋がりがより効果的な施設となる様に、地域の人々にも開放する交流ホールを設けた。人々を導きやすい玄関側のアプローチ面に設け、内と外を繋ぐ機能を持つことで、単に集団活動の為の空間としてだけではなく、地域社会とのコミュニティを創出するハブとなる役割を持たせた。 本施設は、重度の障害のある人でも地域社会との繋がりの中で生活できる「家」として、また地域に暮らす人々の障害への理解や共生を体現できる拠点として、今後のインクルーシブな地域社会構築に向けて、互いが共鳴し合う新しい概念の施設を目指して行く

クレジット

  • 設計
    ゼロ・アーキテクツ プラス コンサルティング、設備:T・S・G、照明:内原智史デザイン事務所、アドバイザー:東京電機大学 古賀政好
  • 担当者
    松本秀樹、松田擁坪
  • 施工
    輝建設
  • 構造設計
    NCU
  • 撮影
    フォトワークス 松田哲也

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