
PROJECT MEMBER
小さな店舗の内装プロジェクト。 依頼主は西荻窪神明通り沿いに建つ住宅の一部で包丁研ぎ屋を運営している。趣味である登山用語から、V字状に切れ込んだ岩稜帯を指す「キレット」を店名として名付けるほどの山好きだ。 店舗部分を含めたこの住宅は、街区の最大利用を図るために生まれた敷地形状と神明通りに対する構えの2種類の角度からカタチが導き出されている。元々の店舗内はその角度がズレとなり、空間のバランスに大きな影響を与えていた。狭小なスペースだからこそ、演出すべき店舗イメージを考える前に、整理すべき対象である「敷地の角度」と「街の角度」を手掛かりに設計を進めていった。 賃貸契約のため内装には一切手を加えないという与条件から、置き家具のみで空間を設えている。合理的な「敷地の角度」に対して、情緒的な「街の角度」を家具の稜線として押し引きしながら、依頼主の持つ山のイメージを重ね合わせてデザインを決定していった。材料選定においては、SPF材+オイルステインによる粗野な山小屋らしさと、研ぎ水色(墨黒)の面材によって洗練された高級感を共存させている。包丁研ぎの心臓的な役割を担う研ぎ台は、燕山荘という山小屋をオマージュして深紅の塗装で仕上げた。