DATA

CREDIT

  • 設計
    ARCHIDIVISION/塩入勇生+矢﨑亮大
  • 担当者
    塩入勇生、矢﨑亮大
  • 施工
    THモリオカ
  • 撮影
    中島悠二

築45年を超える約40㎡の賃貸物件一室の改修計画である。 施主はマンションのオーナーである。既存は2DKの間取りであったが、築年数や間取りに賃貸物件としての需要の限界を感じており、自身の経験から空間的な広がりを得るため、スケルトン状態からの計画が求められた。 スケルトン状態は、RC壁式構造の強固な箱に囲われた内部性が顕在化し、内外の境界がより顕著に現れる一方で、荒々しい躯体素地の素材感により土間空間のような外部性を帯びるのではと感じていた。その中で、この一室には、南西に2つの大きな掃き出し窓に面したベランダと、南東に広がる屋根上という、外部環境に恵まれたポテンシャルがあった。 そこでまず、スケルトン状態の外部性を帯びた空間に対して、私的空間であるトイレや浴室を玄関側に配し、内部として囲う。ベランダ側には室内から伸びたスラブとガラスで区切られた洗濯機置場と、掃き出し窓を介して室内に引き込んだ土間を配し、半外部のように扱う。その間の共用部はニュートラルかつ人の拠り所となるようにカーペットと木壁の場を設けた。 次に、内部と外部をグラデーショナルに繋ぐ存在としてSL+700mmの高さに、既存開口部を貫くような室内外を横断するスラブを架ける。 このスラブは鉄骨によって新たな躯体としての強度を持ちつつ、内外どちらにも転化するような、薄く浮遊した中性的存在とする。それは躯体レベルから見ると家具のように振舞い、上へ上ると既存腰壁窓を利用した屋根上へ出るための動線に、また窓際に腰かけると縁側のようにも振舞う。スラブ下部には土間を滑り込ませ、またスラブ上部は木張りとする。 内外の境界の関係を室内にも引き込むことで、既存開口部に新たな関係性を挿入する。 ひとつのスラブを軸に行為が取り巻きながら内外を体感することは、一室から意識を大きく外へと向ける契機となる。 新たなインフィルがスケルトンの持つ境界を拡張している状態を目指した。

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