カタチを変え、世代を越えて住み継がれる環境へと変換する 埼玉県中部の山頂付近、ミカン畑やご神木の有る自然豊かな敷地。 外壁を共有し3棟並ぶ母屋・旧母屋・作業倉庫がご両親が亡くなられた後空き家となっていた。 今回息子さん夫婦が住み移る事となり、中央に建つ最も古い旧母屋の改修を相談される中これからのご夫婦の生活に合わせ、 1階を隣接する作業倉庫の作業場の延長としての「農のハナレ」 2階を母屋2階の生活空間の延長としての「住のハナレ」として改修する事を提案した。 広大な山林を抱えるご夫婦の暮らしは、季節を問わず敷地内の手入れや牧割り等屋外での様々な作業に追われる。 そんな山の生活スタイルから、1階の「農のハナレ」は土間+腰掛高さの床によって作業スペースや休憩・たまに来るゲストとのコミュニティスペースとして計画した。 2階の「住のハナレ」はゲストの宿泊スペースや、母屋2階の寝室から直接往来可能な ワークスペースやリラックススペースとする事で、作業倉庫・母屋それぞれでの生活が ハナレへ拡張し、これから住む世代の家族にとってより多様な生活の場となるよう設計した。 中央部の構造コア内には、1階は農作業後に土足利用可能なトイレやシャワーを設け、 2階はゲストようのドミトリースペースを配置しつつ、コア内を通り抜け可能な回遊性の有るプランニングとしている。 ハナレ内での1・2階の繋がりは眺望の有る開口際をL字型の吹抜けとし連続性を持たせつつ、光を透過する物見台を設け、 既存の梁は大入等古い母屋としての痕跡を引き継ぎつつ、白く塗装を施す事で記憶として継承している。 上下を繋ぐ鉄骨階段は、山頂という立地上各パーツを手で運び現地で組上げる必要が有った為、ササラ・踏板の受け材等を細かく分節されたパーツを組み上げながら合板やフレキシブルボード等の材を止付けていくこの土地から導かれたディテールとしている。 山頂に建つハナレが単に機能のみでなく、家族の住まい方や周辺環境とのつながり自体を拡張し、今後も世代を越えて住み継がれていく環境となる事を願っている。
クレジット
- 設計
- シグマ建設+ONO一級建築士事務所
- 担当者
- 小野晃央
- 撮影
- 田畑信之