51世帯の住民が集える、全棟平屋の戸建住宅地「オオソラモ土気」。街の中央には全長85mの緑地帯を、街の中心となる集会所と共に配置。その中心にはシンボルツリーであるモミの巨木が聳え立つ。また街の随所には小さな緑地やオープンスペースも点在し、街全体で遊び、休憩、仕事といった様々な活動を行うことが出来る。 昨今の大型住宅地開発では開発業者が経済効率のみを考えた、共用部、占有部、共に一様な印象を持つ街が非常に多く見受けられる。だが、住民、特に子供の成長期には多くの体験が必要であり、その為に様々なバリエーションを持つ場が必要だと考えられる。最もプライベート度の高い各戸そして占有庭では家族や友人とくつろぎ、そこには自由に飾り付けが出来る各戸のモミの木も。宅地に囲まれた3つのT字クルドサックとコミュニケーションスペース(以下CS)では、それぞれの宅地郡の住民同士がその季節を感じながら声を掛け合う。 更に公共度の高いトケモミ公園や集会場を含めた様々なスケールや雰囲気の「体験の場」が点在、大きなモミの木の下と集会所は皆が集まるイベントスペースにも。住民がパブリックとプライベートを使い分けられる構成とすることで、住民の年代や趣向性、気分によりその日過ごす場所を選ぶことが出来るような街を目指した。 単にクリスマスツリーのモミの木が街の中心に鎮座すると聞くと、アメリカナイズされた、日本の風土に馴染まないデザインの街を想像してしまうかもしれない。ただ、年に一度の飾り付けを楽しむという行為は、柳田國男氏に見出された「ハレとケ」という世界観とも通じ“毎日を簡素に生活するが、年に何度かのお祭りは大いに盛り上がり全てを忘れて楽しむ”といった日本人の生活スタイルにマッチしている。また、この地には、土からの気「土気」と書いて「とけ」と読む素晴らしい地名もあることから、中央の公園を「トケモミ公園」と名付け、単純な欧米の模倣では無い、モミの木を中心に日本に昔からあった“野っ原”のような公園をデザインした。モミの木はただの意匠的なシンボルでは無く、この街の住民の毎日の生活そしてイベント時の、“拠り所”となる文字通りのシンボルツリーである。この公園や街が日々の暮らし、そして祭りや楽しみと共にあることを願う。