高級外車を中心に中古車販売、整備業を営む企業のオフィスリノベーションにおいて、車寄せスペースをミーティングルームに改装し、生命力のあるデザインを要望された。 高級外車を取り扱う企業が顧客に提供するものは、移動の手段としての自動車販売ではなく、資産価値としての購入、自分へのご褒美、ワンランク上に導いてくれるアイテムとして捉えると、それを提供する場のデザインは非日常でありエンタメ性を持たせた「おもてなし」を提供することが必要と考え計画した。水を使った生命力をデザインしてほしいという要望がある中で、メンテナンス性やランニングコストを考えると建材で水を表現して日々の業務の支障にならないデザインが最適と考え、「崖」と崖にぶつかる「波のゆらめき」、そして「月明かり」を表現し、力強さと月明かりの静寂を演出し、生命力を表現した。崖はモルタル造形、水面は波板ステンレス板、月明かりは埋込ライン照明で表現した。ミーティングルームは崖の内部に造りながら、オープンスペースは崖と対照的にホワイト色をベースにできるだけノイズとなる色を排除しながら、製作テーブルの脚部を高透過ガラスにして宙に浮いたような軽やかなデザインとした。歩行性を考えて波を表現するステンレス板を天井に設置し、上下逆転すると初めて完成する空間を演出している。高級外車を購入する特別感だけではなく、それまでにいたる「商談」を空間でデザインすることで驚きと高揚感を与える計画としている。