市街化調整区域の1角の敷地は近隣の建物が隣り合っておらず、周囲の道路や田畑の空間の広がりは所有権は異なれど、まるで占有空間のような印象を与え、実際も広がりを持って使われています。 既存の建物は比較的新しくはあったのですが、仕様も間取りも改善したいところが多々あり、住み替えを希望されていたため、建て直すのではなく増築と改修により全く異なる環境をつくる計画としました。 川の防波堤の土手の地形と、その向こう側に広がる景色を一望できる場所の特権を生かし、内外の緩やかな境界をつくる透明な箱を増設しました。 既存の建物の1階部分を拡張し、広いリビングを作り、その周りにポリカでできた3種類の半透明な空間による庭やテラスとのバッファーを加え、レイヤー状の構成としました。農地にあるビニールハウスに、栽培する品種や時期により性能の違うものが採用されるように、それぞれの半透明な空間を使い方に合わせて設計しました。 玄関へのアプローチの屋根は、透明度の異なるポリカを使用することで、木漏れ日のようなやわらかい光が降り注ぎます。建物と一体的なデザインで、外観を損ねないカーポートの庇は直射日光の当たらない明るく居心地の良い場を形成します。 ランドリールームの外にポリカで囲われたサンルームを計画し、庇の代わりにもなる跳ね上げ折戸と水平折戸、腰掛けられる土間による庭と連続する場としました。太陽光発電の活用により電源設備が不要で、灯のない国外の地域にも光を届けるCARRY THE SUNという取り組みによる照明を物干しざおに吊るして暗い時間帯も使用できるようにしました。 南向きの大開口のある眺めの良い離れの壁は半透明なため、日中は照明をつけなくても明るく、夜間は外壁が灯篭のように発光し、周囲を照らし、田園の風景を変化させます。 3次元的に広がるリビングでは、家族の適度な距離感を生む一体的で、形、色、質感の違いによる多様性のある空間の中で思い思いの時間を過ごすことができます。

メンバー

クレジット

  • 施工
    加藤建設
  • 構造設計
    ASA
  • 撮影
    Vincent Hecht / ayami takada architects

データ