傀藝堂 KAIGEIDO -The Triangle Gallery of Light-

僕らの作り出すこれからの建築は、物理的なデザインではなくクライアントと世界へ「価値」を創造するものでありたい。 九州・桜坂にある100年以上の伝統を誇る人形師・中村人形のプロジェクト「傀藝堂」もこの実践のひとつです。 従来、展示と販売の機会は百貨店の企画展などに限られているため、彼らは自分たちのギャラリーを作ることに決めました。またこの先の100年も続く、地域伝統に根ざした建築を望んでいました。 僕らはこれに応えるため、文字通り「地域や歴史に接続する建築」を構想しました。 ① この地域に特徴的なY字路を取り込みます。ギャラリーは3つのY字路で計画されており、様々な選択肢と回遊性を与え、観賞時間を自然と引き延ばすことで商業的効果を生み出します。またこれは「人」のかたちをしたアイコニックなプランとなりました。 ② 江戸時代からの石垣擁壁の連なるこの地域に調和(あるいは擬態)させる、新たな左官擁壁をデザインしました。地元筑後川の川砂利等を使い伝統的な技法左官「掻き落とし」で大きな多面体を施工することに成功しました。 ③ ギャラリーの最奥部には「光の間」として上部約5Mからの自然光のみの空間を用意。ハイライトとなる人形1体のための間としました。この場所の緯度経度特有の、刻々と1年中変容する自然光によって。繊細な彫刻の造形がより際立ちます。「建築家は光を操る。彫刻家は光と遊ぶ」というガウディの言葉をクライアントと共有しながらつくりあげました。 以上のコンセプトとデザインは、僕たちが今まで考えてきた「VCD」メソッド(図)にも沿っています。設計やコンセプトなどの設計側のスタンスからプロジェクトをスタートするのではなく、顧客のV(バリュー、ここでは将来への事業計画、経済的目標、地域貢献)を徹底的に話し合い、それを実現するC(コンセプト)やD(デザイン)を考えます。またそれを世界に発信するお手伝いをします。 ギャラリーの上階はお施主様の住宅。私が北欧で学んだ光の哲学を取り入れた、多面体の天井が反射させる間接照明だけで構成された、廊下のない三角形のリビングで住人自身が「光を選ぶ」生活を提案しています。

メンバー

クレジット

  • 設計
    神谷修平
  • 施工
    未来図建設
  • 撮影
    太田拓実

データ