
三鷹市に本社を構える、物流会社を統括するホールディングスのオフィスビル。都道に面した敷地は南北に長く、将来的な敷地の有効活用を踏まえて敷地を分割した上で、位置指定道路の引込みや集合住宅の増築を段階的に行う、第一期の計画である。 ホールディングスとは多様な会社を包括するシステムであり、ゆえに会社の顔となるその建築も、画一的なものでなく多面的に捉えられるものであってほしい。計画に際し、物流業・運送業に端を発する会社の、仕事の確実性や徹底した規則そのものを体現する建築が相応しいと考えた。 建物の性格上、周囲に埋もれてはならず、かといって存在が突出し過ぎるのも好ましくない。そこで、プライバシーの確保と開放性、騒音振動への配慮、外観の近寄り難さを避け親密な建物とする、等の条件を満足させるため、建物の四周においてそれぞれ性格の異なる顔をつくっている。 外部からの視認性が高い北面は開口部と壁が規則的に反復し、東面は増築時の長い立面計画を見据えて開口部と壁がスパンを変えて反復する構成とした。ともに折板状の外壁がそのままインテリアへ持ち込まれる。南面・西面は隣接する住宅や共同住宅に応じた、ポツ窓や引違い窓が現れる。 絶対高さ制限下での3フロア+屋上への太陽光発電設備の設置という与件に基き、階高をできる限り抑え、猥雑になりがちな設備機器と配線配管を天井に押し込んだことで、各階の天井高さは2,300mmとやや低めに設定された。しかしながら、折板状の壁と交互に配置されたフルハイトのサッシにより視線は上下方向へ抜け、低さや窮屈さを感じない、適度なプライバシーと大きな拡がりをもったインテリアとなっている。 単純でありながらも力強さをもった構えで、調度品の設えによって建築の表情に大きく変化を加えられ、地域に長く根差した会社の本拠地として、時の流れに耐え得る建築を目指した。