井の頭公園に面する12 階建てのマンションの10 階の部分の1室の改修の計画。もともとの住戸の形状が細長く、構造壁の制約によりプランニングに工夫が必要とされる物件であるため依頼主より相談をいただいた。 細かく部屋を分割してしまうと、天井高の低い既存の状態に近く、構成もほぼ同様の間取りになってしまい、窮屈に感じられることが想定された。そこで、玄関からLDK とインナーバルコニーまでを既存の躯体の形状を活かして、蛇行しながら緩やかにつなぐ計画することで、公園の風景が入り込むおおらかな空間を実現しようと試みた。 リビングダイニングは上部に間接照明を仕込んだ曲線状の下がり天井で全体を囲むことで、遠近感を錯覚させ空間をより広く見せる工夫をした。下がり天井の下面とその下の壁はライトグレーとし、それより上を白で統一することで、天井を明るく見せて実際よりも高く見せるよう工夫した。下がり天井から床までの距離は2M 強しかないが、居住域に限定された範囲に、風景を切り取るフレームとして壁に吊り下げられたアートや窓、テレビがランダムに展開しさせて、近づいたときモノに目線が行くようにし、奥行きが深くなりすぎないようにすることで圧迫感を軽減した。 キッチンはリビングダイニングとの境に曲線上の開口を設けてつなぎ、一体感を持たせつつ空間としては分けることで、調理する動作をそのほかの日常の動線と切り分けることと、つなぐことを生活する人が選択しやすいようにした。カウンターは既存の位置から大きく変更せず、L 型として食洗器を追加することで機能性を高めた。 ◇公園の風景を取り込む 〈公園が見渡せるバスルーム〉 依頼主からの要望で、公園の景色を見渡せるビューバスを計画した。角度を振ることで、インナーバルコニー越しにバルコニー側の窓と浴室が正対するよう計画した。浴室の壁と天井は光沢感のあるバスパネルを使用し、浴室に連続する脱衣所の壁も一面ミラー貼りとすることで、窓の外の緑や光が室内にまで反射して映り込むよう意図した。 〈インナーバルコニー〉 屋内の一部にバルコニーと連続して屋外空間のような使い方のできる場を計画した。木毛セメント板で少し粗々しい質感で仕上げて、すべらかな質感のリビングのインテリアと対比させた。ガラスの引き戸を開放すれば、リビングと一体的にも使用でき、外壁で囲まれ、ビル風や日射などから守られた環境でありつつも、開放性の高い空間とした。 インナーバルコニーに連続する細長いリビングは、家族が各々適度な距離感を保ちながら居心地のよい場所を選んで同一の空間に共存できるよう設計した。 ◇照明器具や置き家具の製作 ライトグレーの壁に囲われた部屋を明るく見せるために、設置したペンダントライトは、金網にオーガンジーのコサージュを取り付けて製作した。白いレザーのソファや、デスクと合わせて設置したスツールは、設計事務所でデザインして製作したもので、同じ柄の家具を視野に入らないところまで、室内に点在させることで、動きながらも統一感が感じられるよう計画した。

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