
SOSO coffeeはベトナム ホーチミン市内にある新築マンションの1階に計画されたカフェである。富裕層のベトナム人や外国人がたくさん住む住宅開発が進むエリアの中にあり、高層マンションから低層のヴィラタイプまでさまざまな住居が建ち並んでいる。クライアントのベトナム人オーナーは日本をこよなく愛し、今回のカフェの内装にも日本らしさを取り入れたいとのことであった。ただ日本らしいと言ってもいわゆる「和風」ではなく、どちらかといえば日本人の精神性やそれに基づく空間表現の美しさに焦点を当てることがクライアントの要望であると理解した。 店舗スペースはトイレや階段部分を除くと40㎡ほどのコンパクトなスペースである。席数を有効に確保しようとすれば、カウンターを壁際に寄せ、残りを客席にするのが定石ではあるが、効率性だけを重視して詰め込んだプランではなく、近くを流れるサイゴン川のようにゆったりとおおらかな空間のほうがここにはふさわしいと考えた。そこでカフェの中心に大きな楕円形のカウンターを大胆に配置し、その周囲の余ったスペースにテーブルを置くことにした。店内に入るとまず入口付近まで迫るカウンター越しに注文をし、そこから楕円に沿って左右に別れて着席する一連の動きが自然と流れるようなプランを考えた。 カウンターは現場打ちのコンクリートで一体型に成形されている。側面のみ研ぎ出して骨材の砕石を露出させ天板面とのエッジで仕上げを分けている。本来コンクリートの持つ力強さや荒々しさが家具に施すような丁寧な仕上げをすることによって洗練された柔らかな表情になった。壁に沿って設けられたベンチにはテーブルと一体となった皮付きの丸太が木立のように並び、脚元は真鍮のシリンダーで支えられすっきりしたシャープな印象を与える。丸太に嵌め込まれたテープライトが壁に向かって光を放ち、反射光が店内を優しく照らす。家具や壁面に使用された木は白、グレー、ブラウン、黒の4色に塗り分けられ、木目が見える程度の薄塗りをして木の表情を残している。天井は無数の穴がランダムに空けられたパネルで覆われ、穴から漏れた淡い光によって白い雪に包まれたような、また夜には満点の星空が広がったような店内となり、1日の中で異なる表情を持つ空間となった。 全体の色味を淡く、それぞれが主張しすぎることのないような素材を選定し、間接照明によって雰囲気をいっそう柔らかくすることで、優しい空間に仕上がったと感じている。