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無骨さとここちよさの両立 スペースを縮小しながら、雑多な空間を整理する 福岡県筑紫野市。約15年の歴史を持つ自動車整備工場は、お客様への提供サービスの幅を広げ「指定工場」となるため、リノベーションを決意。面積の半分を占めていた工場スペースを3分の2に拡張、その代わりにお客様の応接・スタッフの事務スペースを残りの3分の1に縮小する必要がありました。リノベーション以前は、資料や各種物品類で溢れていた応接・事務スペース。その面積を更に小さくしながら、商談や修理待ちで長く時間を過ごすお客様がゆったりと過ごせる空間に生まれ変わらせる。そんな課題からスタートしました。 空間を縦方向に拡張 その一つの答えが、工場特有の屋根の高さを利用して、新たに2Fを作ることでした。スチールの階段を登った部分に、スタッフの事務スペースと社長室を配置。応接スペースと空間を共有することで、スタッフはいつでもお客様対応ができ、同時に事務スペースのセキュリティも確保。空間の縦方向への拡張が、限られたスペースに多様な使い方を生み出しました。 工場らしい無骨さとここちよさを両立させるデザイン ここは、自動車修理・整備のプロフェッショナルが働く自動車整備工場。お客様はもちろん、働く人々にとっても、この空間が愛着を持てるものになれば。そんな思いでデザインを進めました。階段から2階までの基礎となる部分は全てスチールで新規製作したり、壁面の鉄骨があえて露出するようにディテールを調整したりすることで無骨な雰囲気を表現。一方、家具や収納棚にはぬくもりを感じる木材を使用。プロフェッショナルのこだわりと、お客様へのホスピタリティや居心地の良さを表現するデザインとなりました。 以前の空間では置き場や配置に困っていたパンフレットや物品類も、木で造作した収納棚にスッキリと収まり、空間の雰囲気を柔らかく演出しながら機能を両立させる工夫となりました。日々の応接オペレーションも含めて一緒に検討をさせていただき、最適な収納位置と収納量を決定しました。 空間のシンボルになっている鉄の階段。踏み板は網状、手すり部分はワイヤーで表現をすることで、スチールの重厚感がありつつも光を通し、空間の奥行きが感じられる工夫をしています。 ディテールに現れるお客様への思い 今回のリノベーションで最も特徴的だったのは「オーナーのこだわり」よりも「お客様のここちよさ」が優先されるオーダーであったことです。「待つ人が多いから、少しでもここちよく過ごせるようにしたい。」そんなオーナーの思いは、各テーブル間の距離感や、トイレに続くバックヤード部分に対する空間の取り方へのこだわりに現れました。機能もデザインも一新した今回のリノベーション。ここちよくなった空間で、愛車の帰りを待ったり、新しい車と出会ったり。みなさんの車への愛が溢れる空間になることを祈っています。 ライター:智原北斗