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歴史的に古くから職住一体型の住宅が立ち並ぶ地域。店舗併用住宅をリノベーションし、人と猫が快適に暮らす住まいの計画。施主からの要望は2匹の猫たちにとってストレスなく暮らせる家づくりであった。 京都市の景観条例から、建て替えを行なった場合は2階以上の階にセットバック等の厳しい制限がかかることから、面積を最大限に利用できるように既存建築を改修することとした。 外部は景観条例に合わせ小豆色の保護塗料を塗装することで耐久性、耐候性の改善を計っている。 内部は断面的な動きが行えるように猫の動線を空間の垂直方向にいくつも点在させ、人と猫の動線と重なり合いながら多面的に展開されるよう、壁面にキャットウォークを分節して設けることで空間の拡張を意図した。 1階から3階のロフトまで縦横無尽に動き回れる立体的な猫動線を描き、高低差のある設えを自由に登り降りしたり、気分に合わせて昼寝の場所を変え、猫のテリトリーが広がるように計画した。また建築資材やインテリアもできるだけ猫にやさしい設えと傷や汚れに耐えうる素材選定を行い、そこへ人の動線や暮らしに必要な要素を加えていくことで、お互いストレスフリーになる改修を目指して設計をした。 壁を取り払う事で動線を単純化させ、暮らしながら必要なものを足していく間取りとするよう、キッチンの位置を変更しロフト空間を設けることで一筆書きの回遊性プランとしている。 人と猫で分けずに動線が混じり合う住まいとなるよう、猫の水飲み場は来客時には腰掛けとなり、壁面や天井に設けたキャットウォークやステップは収納・カーテンレールとしても利用できる、といった猫と共生できるデザインとした。 随所に取り入れた「色」には光を与えるよう開口部や照明を計画し、そこに入射する光の反射で「色の光」へと変質させている。色の光が建築に映り込むことで、空間に広がりや締まりが生まれることを期待している。 本能を刺激する楽しみが増えた猫たちの日常はいきいきとし、施主もその姿を日々そばで感じ、断熱や温熱性能が向上した住居環境で生活することで心身共に健康的な住まい方が実現している。