World-Food Waste Teahouse ベネチ庵

「ベネチ庵」は、世界中で問題となっている食品廃棄物や気候変動に対する建築的解決策を探るためのプロジェクトです。世界で初めて食品廃棄物をフードコンクリート化し、構造体として使用しており、先進国だけでなく発展途上国でも深刻化している食品廃棄の問題に光を当てています。 私たちは、不安定な世界情勢の中でも、人々が集い、対話を交わすための「茶室」として「ベネチ庵」を設計しました。お茶は、世界各地で文化や伝統が異なりますが、人と人とをつなぐコミュニケーションのきっかけとなる点では共通しているものです。 この茶室は、世界中どこでも展開できる普遍性を持ちながら、同時に地域の特性を反映した固有性を体現しています。ヴェネチアの緯度(45度)から形態を導き、イタリアの食品廃棄物を建築材料として活用することで、その土地ならではの茶室を生み出しました。地域が変われば、使える廃棄物も緯度も変化するため、同じルールに従っていても、全く異なる茶室が生まれる可能性を秘めているのです。 水は世界中で貴重な資源であり、ここヴェネチアでも浸水と干ばつという両極端な問題に直面しています。「ベネチ庵」の構成部材は、本来、水に弱い食品廃棄物からできていますが、新たな耐水加工技術の開発によって、屋外展示に耐えうる性能を持たせています。来場者は、海が湛える水を眺めながら、水と共存できる新素材に包まれる体験を通して、その大切さを感じることができるでしょう。 「ベネチ庵」は、ヴェネチア・ビエンナーレの関連イベントとして、ジャルディーニのマリナレッサ・ガーデンにセルフビルドで建設されました。世界中の人々が集い、知識や技術を共有し、食品廃棄物や気候変動について議論を交わす場として、未来への希望を育む実験場となることを目指したものです。 展示期間の終了後、「ベネチ庵」は分解し、家具として再構成できるようになっています。最新のブロックチェーンにより部材のトレーサビリティを確保し、長く人々が愛着を持って手を加えられる家具のかたちで、その思想を受け継ぎ、世界中に展開していきます。

メンバー

クレジット

  • 設計
    株式会社三菱地所設計
  • 担当者
    藤貴彰(tyfa/Takaaki Fuji+Yuko Fuji Architecture, 三菱地所設計) / 稲毛洋也(三菱地所設計) / De Yuan Kang(三菱地所設計アジア社)
  • 施工
    セルフビルド
  • 撮影
    Yuta Sawamura

データ