JR西日暮里駅前に計画されたクレープ専門店。 都市再開発により解体予定の建物で、期間限定での出店が決まった。 このクレープ店は2022年、谷中に開業したasatteという店舗の分館でもあり、asatteは食の一歩先の未来を目指して、日々メニューの開発や新たな食の可能性を探究している。期間限定であることと、asatte本館の文脈をどう引き継ぐかがプロジェクトの焦点となった。 期間限定の自社店舗であることから、初期費用を抑えて建具以外の施工をDIYで行い、内装の解体を極力抑え、既存に上書きするように各要素を足していった。基本的な素材は構造用合板やラワン合板に塗装を施し、ローコストながらも空間に多様さを与えていく。中央のベンチは自社の倉庫に余っていた合板の端材を10cm角にカットし、セメント目地を埋めることでベニヤタイルという新しい製品の可能性を試みた。さらに、クレープ工房を囲うカウンター天板は既存のシナ合板にベンガラ色のPタイルを増貼りすることで耐水性の向上と本館のカラーリングの継承を試みた。コーナーの外観は全面ガラス張りとし、アイレベルのみに造作を設えることで、人通りの多い立地に対して応えている。 期間限定という課題が、asatteらしいストックの利活用やあり合わせの素材の創意工夫を引き出した。こうした小さな開発の一つ一つがこれからの街の発展に繋がっていくことを期待している。