陸前高田市ピーカンナッツ産業振興施設

陸前高田市は震災後、ピーカンナッツの木を植樹し、森を作り、果実を生かした6次産業化プロジェクトに取り組んでいる。中心市街地嵩上げエリアの終端に位置する本施設はその拠点となり、ナッツとチョコレート菓子の加工工場、販売店舗、キッチンスタジオ、多目的スペースから構成される。 陸前高田にはもともと山から海へつながる「まちの骨格」があったが、 嵩上げ後の街のグリッドに対し、高田松原でも有名な広田湾の海岸線は南東に振れた方角にある。南北軸と東西軸に、この海への軸を重ね合わせることで、店舗・多目的スペースを領域的な広がりを持つ多方向に開かれた五角形平面とした。 かつてこの地で活躍した気仙大工が得意とした扇垂木を手がかりとして、 天井は県産材のアカマツ合板に何本もの角材を放射状に並べていくことで、扇形状に広がる木質の勾配天井が全体を包み込むような居場所を考えた。内部はキッチンスタジオを中心として店舗・多目的スペースがワンルームでつながっていて、軒下空間に沿いながら動線が緩やかに連続し、人々がのびのびと回遊できる空間となっている。日常的には工場の見学スペースとなるステージの段々状の床は、外部にそのまま延びてテラスとなり、将来的には眼下に広がるピーカンナッツの森を一望できる重要な場所となる。 扇形の屋根が、人々の賑わいと多様な活動を包み込み、陸前高田の街にとって、産業と人を育むランドマークとなることを、強く願っている。

クレジット

  • 撮影
    中村絵

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