クライアントのご夫妻は老後の生活を見越し、2階建ての中古住宅を平屋へ建替えることを決心されました。 建替えに際して、隣家や隣接する公園からのプライバシーを確保しつつ、開放的で明るい住まいにしたいという、一見相反するようなご要望から設計がスタートしました。 既存のお住まいは南側に広い庭を有しながらも、隣家の2階からの視線を遮るカーテンが閉じられ、庭への眺望も得づらい、暗いリビングとなっていました。建替えに際して、プライバシーの問題を軽減するとともに、植栽の木漏れ日や四季の表情を身近に感じられる庭へと、住まいと庭との関係を再構築したいと考えました。 まず、既存の庭の植栽を保存、新たに四季折々の表情豊かな植栽を加え、約5間×5間の新たな住宅とそのアプローチを庭に沿うように設けました。 南西角の開口部は隣家2階の視線を見切る為の垂壁と、公園からの視線を防ぐ腰壁が半分ずつ端部で互いに重なる構えとすることで、プライバシーと眺望の両立を図っています。 ここは、アプローチの終点となる玄関ポーチと、リビングから続くインナーテラスを兼ね、雨戸の開閉によって内・外の領域、通風や光の量を調整することができます。 リビングからは庭の植栽と公園の木々や空が連続して見え、公園側の腰壁は午前は東からの日光を受けることで反射板となって室内を明るく照らし、午後は西日を半減します。 間取りは回遊性をもたせ、シンプルな架構とすることで機能性とコストを両立させています。高低・奥行きの異なる諸室を行き来する中で、通路の先にある公園や庭の四季・木漏れ日・風の流れを感じられるよう各開口部を入念に検討しました。 閉じることと開くこと、相反する住まいの根源的な要求に応じながら、問題解決に留まらない、普遍的で大らかな住空間を実現したいと考えました。

メンバー

クレジット

  • 設計
    中土居宏紀建築研究所
  • 担当者
    中土居宏紀
  • 施工
    中土居工務店 / 古井裕貴
  • 構造設計
    中土居宏紀建築研究所
  • 撮影
    中土居宏紀
  • 庭園
    SCOP / 嶋かずみ

データ